ロングトレイルを歩くとき、食料は山の中だけで完結しません。数日に一度、ルート上の町や集落に立ち寄り、次のセクションぶんの食料を調達する「タウンリサプライ」は、長距離歩行を成り立たせる重要なスキルです。
しかし初めてのロングトレイルでは、「どの町で何日分を買えばいいか」「山に持ち込める食品の選び方は?」「買い出し時間をどう行程に組み込む?」といった疑問がまとめて押し寄せます。装備の軽量化や歩き方は書籍や記事で学べても、補給地点での実務的な段取りはあまり語られません。
この記事では、ルート設計の段階から補給地点での買い出しまで、判断基準と手順を順番に整理します。食料の選び方そのものより、「町でどう動くか」という行動の組み立てに焦点を当てています。
補給計画はルート設計と一体で考える
ロングトレイルの食料補給で最初にすべきことは、地図上に補給地点を書き込み、セクションごとの日数と必要カロリーを見積もることです。補給地点の間隔が均等でないのが普通で、6泊区間のあとに1泊区間が来ることもあります。この凸凹を事前に把握しないまま歩き始めると、長い区間を前にして食料が足りなくなります。
補給地点として使えるのは、コンビニ・スーパー・道の駅・山小屋売店・農協系の直売所など、業態はさまざまです。ただし山岳地域に近い集落ほど店が少なく、品揃えも限られます。「町がある=十分な食料が買える」とは限らないため、事前にその集落で何が手に入るかを調べておくことが欠かせません。自治体の観光サイトや登山口の案内板、地域の山岳会のウェブサイトなどが参考になります。また、店舗の営業日や時間は季節によって大きく変わるため、最新情報は現地の自治体や店舗に直接確認するのが確実です。
セクションの日数を決める際は、「1日あたりの食料重量×日数」が歩き始めの荷重になることを念頭に置きます。一般的な山行での目安は1人1日あたり500〜700g程度とされますが、消費カロリーや好みによって大きく変わります。長い区間の前には荷重が増えることを受け入れたうえで、荷物量と体力のバランスを考えてセクション切りを決めてください。
補給地点の「使える時間」を行程に組み込む
補給地点に到着する時間帯は、計画段階から意識しておく必要があります。山から下りてきた午後遅い時間に町へ入っても、小さな集落では店がすでに閉まっていることがあります。逆に早朝に通過するルートでは、開店前で買い出しができない場合もあります。
行程を組む際には次の3点を確認しておくとよいでしょう。
- 到着予定時刻と店舗の営業時間の照合:行程表を作る段階で、補給地点への到着が何時頃になるかを確認し、近隣の店舗の一般的な営業時間と照らし合わせます。
- 補給地点での滞在時間の確保:買い出しには思ったより時間がかかります。店を探す、品物を選ぶ、ザックに詰め替える、食事や休憩を取る——これらをまとめると1〜2時間はあっという間に過ぎます。行程表には補給日の昼または前後に余裕を組み込んでおくことをおすすめします。
- 代替手段の把握:メインの店舗が閉まっていた場合に備え、同じ集落内の別の選択肢(自動販売機、宿泊施設の売店、ガソリンスタンドに併設されたコンビニなど)を事前に調べておくと安心です。
山向きの食料を町の品揃えから選ぶ
登山向け専門店がない一般的な商店で買い出しをする場合、すべての食料が山向きに最適化されているわけではありません。そのなかから「使える食材」を選ぶ視点が必要です。
カロリー密度は最初に確認する指標です。重量あたりのカロリーが高いほど、同じ重さでより長く歩けます。ナッツ類、乾燥果物、チョコレート、スナック菓子(特に油脂が多いもの)、即席麺、アルファ化米、乾燥餅などは一般のスーパーやコンビニでも入手しやすく、カロリー密度が比較的高い食品です。
調理の手間と燃料消費も考慮します。湯を注ぐだけで食べられるもの(カップ麺、インスタントスープ、フリーズドライ食品)は燃料を最小限に抑えられます。缶詰は重量がかさみますが、味の満足度が高く、長い区間でのモチベーション維持に役立つことがあります。使うかどうかは区間の長さと体力状況で判断してください。
賞味期限と腐敗リスクは、特に夏場の判断基準になります。生鮮食品は補給当日の行動食・夕食に使い、翌日以降は常温保存可能な食品に切り替えるのが基本です。気温が高い時期に生ものを数日持ち歩くと、食中毒のリスクが上がります。
ザックへの詰め替えを補給地点でやり切る
補給地点でよくある失敗は、買ったものをそのまま袋ごとザックに押し込んで歩き始めることです。食料の外装袋はかさばる割に軽量化に貢献せず、袋の中の食料を探す手間も増えます。補給地点を離れる前に、詰め替えと整理をその場で完了させるのが原則です。
詰め替えの手順としては、次のような流れが現実的です。
- 購入した食料を全部並べて、日数分に分ける(1日分ずつ小分けにしておくと夕食・朝食・行動食の確認が楽になる)。
- 外装袋は処分できるゴミ箱がある場所で捨てる(山の中でゴミが増えるのを防ぐため)。食べ物のゴミは必ず持ち帰りが原則で、補給地点で処分できるものはここで済ませます。
- 食料はザックのどこに入れるかを決めて収納する。行動食は取り出しやすい場所、調理が必要なものはまとめて一カ所に。
- 重量を感じながら背負い、荷重バランスが大きく崩れていないか確認する。
詰め替えの時間は、慣れていれば15〜20分程度です。補給地点での滞在時間の見積もりにこの作業時間を含めておいてください。
補給地点での体力管理も計画のうち
買い出しと詰め替えに集中するあまり、補給地点での休息や食事を省略してしまう人がいます。しかしロングトレイルでは、補給地点は体力を回復させる数少ない機会でもあります。
可能であれば、補給地点で温かい食事を取ること、靴を脱いで足を休ませること、ルートの次のセクションの状況を地図や地元の情報で再確認することを習慣にするとよいでしょう。特に長い区間の前は、歩き始める前の体の状態がそのままセクションの完成度に影響します。
補給地点での宿泊については、すべてのロングトレイルで選択肢があるわけではありません。宿泊施設の有無・料金・予約の要否は、事前に各地点の自治体や施設に確認してください。
次の行動
まず計画中のルートの地図に補給地点を書き込み、セクションごとの日数と店舗の営業状況を調べるところから始めてください。補給地点の情報は自治体の観光・登山情報ページや、地域の山岳会のサイトが参考になります。仲間と計画を共有したい場合や、同じルートを歩いた経験者のアドバイスを求めたい場合は、YAMATOMOのコミュニティ機能を活用してみてください。