著者 YAMATOMO 編集部 公開日 約8分で読めます

ヘリ救助の呼び方——110番と119番の違い

ヘリ救助の呼び方——110番と119番の違い(イメージ)

山で動けなくなったとき、スマートフォンを手にした瞬間に「110番と119番、どちらにかければいい?」と迷う人は少なくありません。結論を先に言えば、どちらにかけても救助につながります。ただし、それぞれの窓口が担う役割は異なり、状況によって最初にかける先を変えると対応がスムーズになります。

この記事では、110番(警察)と119番(消防・救急)が山岳救助においてどう動くのかを整理し、電話をかけるときに伝えるべき情報と、電話が通じない場合の選択肢を順番に説明します。山岳遭難は命に直結するため、ここで示す内容はあくまで一般的な考え方です。各都道府県の警察・消防・山域の管理者が公開している情報も合わせて確認してください。

110番と119番、山ではどう使い分けるか

110番(警察)は、山岳遭難の受付窓口として全国的に広く機能しています。警察は山岳救助隊を組織しており、ヘリコプターの運用、地上隊との連携、捜索活動を一体的に行う体制を持っています。「道に迷った」「滑落した」「パーティの仲間が動けなくなった」といった遭難全般は110番が対応窓口になることが多いです。

119番(消防・救急)は、負傷・急病など医療的な緊急対応が主な役割です。消防ヘリは救助と搬送の両方を担いますが、山岳地形への対応能力や装備は地域によって差があります。ただし119番でも、通報を受けた消防が警察や防災ヘリと連携して対応するケースがあるため、「119番では山の救助は来ない」というわけではありません。

整理すると、遭難(道迷い・滑落・行動不能)なら110番を最初の選択肢、負傷や急病で医療搬送が急がれるなら119番を最初の選択肢と覚えておくと判断しやすいです。どちらにかけても、状況に応じて関係機関へ連絡が回ります。迷う時間を使うくらいなら、どちらかにすぐかけることを優先してください。

電話でなにを伝えるか

通報時に伝えるべき情報は、あらかじめ頭に入れておくと焦りの中でも整理しやすいです。以下の順で伝えることを意識してください。

  1. 山の名前とルート名(例:「○○山、△△登山道を登っています」)
  2. 現在地の特定(登山口からの所要時間の目安、標識の番号、地形の特徴)
  3. 何が起きているか(転倒・滑落・道迷い・急病など)
  4. 負傷・症状の状態(意識の有無、動けるかどうか、出血の有無など)
  5. パーティの人数と連絡者の氏名
  6. スマートフォンのバッテリー残量と電波状況

現在地の特定は救助側にとって最も重要な情報です。スマートフォンのGPSアプリや登山地図アプリを使って緯度・経度を読み上げられると、ヘリや地上隊が向かう時間を大きく短縮できます。登山地図アプリの多くは電波がなくてもGPSで現在地を表示できるため、出発前にオフラインマップをダウンロードしておく習慣が有効です。

電話中は落ち着いてゆっくり話してください。オペレーターが聞き返すことを恐れず、確認の質問に答え続けることが大切です。

電波が届かないときの選択肢

山では電波が入らない場所も多く、「電話がかからない=助けを呼べない」と思い込んで行動を誤るケースがあります。電波がない場合の選択肢を知っておくことは、遭難時の判断を広げます。

緊急通報(110・119)は電波が弱い場所でもつながりやすい場合があります。 通常の通話圏外でも、他社の電波を借りて緊急通報だけ発信できる仕組みがあります。まず試してみることが重要です。

稜線や高い場所へ移動して電波を探すという方法も有効ですが、負傷者を抱えている場合や天候が悪化している場合は無理な移動がリスクになります。安全に移動できるかを慎重に判断してください。

登山届と登山アプリの緊急連絡機能も、電波のある場所での通報を補う手段になります。登山届を事前に提出していれば、下山予定時刻を過ぎたときに家族や警察が動く起点になります。登山届は管轄の警察署・登山口のポスト・登山届専用ウェブサービスなどで提出できます(各都道府県警察の山岳遭難救助のページで確認してください)。

ヘリが来るまでにすること

通報が通じたあと、救助ヘリが到着するまでの行動が生存率に影響します。

その場で待機するのが基本です。移動すると発見が遅れます。負傷者が一人で、周囲に安全なスペースがある場合は、ヘリが着陸または降下できる開けた場所に移動することを検討してください。ただし無理な移動は禁物です。

低体温症を防ぐことも重要です。日本の山岳では、夏でも稜線や標高の高い場所では気温が低く、じっとしている状態では体が急激に冷えます。レインウェアや防寒着を着込み、ビバーク装備があれば使ってください。

ヘリへの合図として、明るい色の衣類や非常用ホイッスルが役立ちます。ヘリの音が聞こえたら、開けた場所に出て腕を大きく振るといった視覚的な合図を出してください。ヘリ側からは地上が見えにくいことが多く、積極的に存在を示すことが早期発見につながります。

民間救助ヘリと費用の考え方

消防・警察のヘリは公的機関の救助活動であり、費用の扱いは各自治体の制度によって異なります。一方、山岳地域によっては民間の救助ヘリが出動することもあります。民間ヘリの場合は費用が発生することが一般的で、数十万円単位になるケースもあります。

山岳保険や山岳共済は、こうした救助費用を補償する手段として広く知られています。補償内容や加入条件は保険・共済の種類によって異なるため、加入前に公式資料で確認してください。費用の心配が救助要請をためらわせる原因になることは、安全の観点から避けるべきです。命の危険がある場合はためらわず通報することを最優先にしてください。

次の行動

まず、次の登山前に登山届の提出方法を確認し、現在地を特定できる登山地図アプリをスマートフォンにセットアップしておいてください。緊急時に伝えるべき情報(山名・現在地・状況・人数)をメモして行動計画書に書き添えておくと、冷静さを失いやすい場面でも役立ちます。山岳保険・共済の加入状況も、この機会に見直してみてください。YAMATOMOの認定ガイド依頼機能では、山域に詳しいガイドと事前に情報を共有しながら計画を立てることもできます。

参考資料

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