著者 YAMATOMO 編集部 公開日 約8分で読めます

登山用のストックの長さと先ゴム——使い分け

登山用のストックの長さと先ゴム——使い分け(イメージ)

ストックを買ったものの「どの長さに調整すればいいのか」「先ゴムはいつ外すのか」と迷ったまま山に持ち込む人は少なくありません。長さが合っていないと体幹への負荷が増え、膝や手首を痛める原因になります。先ゴムの使い方を間違えると、岩場で滑ったり、山小屋の床を傷つけたりすることもあります。

この記事では、ストックの長さ調整の基本的な考え方と、地形・場面による使い分け、先ゴムの種類と脱着の判断基準を順に整理します。道具の理屈を理解しておくと、実際に山を歩きながら自分で調整できるようになります。

長さ調整の基本——肘の角度を出発点にする

ストックの長さを決めるときの基準として広く使われているのが「肘90度の法則」です。平地に立ち、ストックの石突きを足元に置いたとき、グリップを握った肘の角度が90度前後になる長さが、水平な地面での基本セッティングです。

ただし、これはあくまで出発点です。実際の山道はほとんどが傾斜地であるため、登りと下りで適切な長さは変わります。また、グリップの太さや自分の手の大きさ、ストラップの有無によっても体感が変わるため、出発前に平地で一度確認してから歩き始めるのが実用的です。

調整式のストックには「最短〜最長」の使用範囲が記されています。この範囲を超えると固定機構に無理がかかり、歩行中に縮んで転倒するリスクがあります。スケールのラインを確認し、締め付けが十分かどうかを調整のたびに確かめる習慣をつけてください。

登りと下りで長さを変える理由と目安

登りは短め、下りは長め

斜面を登るとき、平地と同じ長さのストックを使うと腕を前に突き出しすぎる姿勢になり、背中が丸まりやすくなります。登りでは基本の長さから5〜10cm程度短くすることで、体幹を起こしたまま歩けます。

下りは逆です。斜面に先を刺したとき、肘が伸び気味になると膝への衝撃を吸収する力が弱まります。下りでは5〜10cm程度長くするとグリップが下がり、体重を預けながら安定して歩けます。

この「5〜10cm」という幅はあくまで目安です。傾斜の急さ、自分の体格、ストックの使い方のクセによって変わります。実際には斜面を数歩歩いてみて、腕に無理なく体重を預けられるかどうかで微調整してください。

横切りトラバースでの非対称調整

斜面を横切るとき(トラバース)は、山側の腕を短く、谷側の腕を長く調整すると体が斜面に沿いやすくなります。長い横断が続く場合は試してみる価値があります。ただし調整に手間がかかるため、短い横断なら無理に変える必要はありません。

グリップの持ち方と長さ調整の関係

ストックには「通常グリップ」の持ち方に加え、グリップの上端を上から押さえる「オーバーグリップ(サミットグリップ)」と呼ばれる持ち方があります。急な登りや、両手で岩を使う場面でストックを短く持つときに使う方法です。

この持ち方を使うと、ストックの長さを変えずに実質的な使用長を短くできます。つまり、急登の直前に毎回長さを変えるのが面倒であれば、グリップの持ち方で対応するという選択もあります。ただし、グリップを上から握ることで手首のストラップが使いにくくなるため、どちらを優先するかは自分の歩き方に合わせて判断してください。

先ゴムの種類と脱着の判断

先ゴムの役割

ストックの先端(石突き)は金属製またはカーバイド製で、先ゴム(ラバーチップ)はその上に被せるカバーです。先ゴムには主に次の役割があります。

先ゴムをつけたまま歩く場面

一般的に先ゴムは次の場面でつけたまま歩きます。

先ゴムをつけたまま土の登山道を歩いても問題はありません。先端が刺さりにくくなるため踏ん張りは弱まりますが、軽い傾斜であれば支障は小さいです。

先ゴムを外す場面

先ゴムを外して金属の石突きをそのまま使うのが有効なのは、次のような場面です。

注意が必要なのは、先ゴムを外したまま山小屋に入ること、また木の根・ぬれた岩の上での過信です。金属の石突きは岩のうえで方向によって滑ります。「石突きを出している=どこでも滑らない」とは考えないでください。

先ゴムの紛失と劣化

先ゴムは歩行中にずれたり脱落したりすることがあります。特に泥道や雪面では先端に吸引力がかかって外れやすいです。予備を1〜2個ザックに入れておくと安心です。先ゴムが割れてきたり、変形して外れやすくなってきたりしたら交換のサインです。多くの先ゴムは単品で購入できますが、ストックのメーカーや型番に対応しているかを購入前に確認してください。

スノーバスケットとマッドバスケットの使い分け

ストックには「バスケット」と呼ばれる円盤状のパーツが先端付近に取り付けられています。バスケットは雪や泥にストックが深く刺さりすぎるのを防ぐ役割をします。

スノーバスケットは直径が大きく(6〜10cm程度)、雪面での沈み込みを防ぎます。残雪期・冬山では必須に近いパーツです。

サマーバスケット(マッドバスケット)は直径が小さく(3〜4cm程度)、夏山の土道や泥道での使用を想定しています。多くのストックにはサマーバスケットが最初から装着されています。

バスケットの交換は多くのストックでネジ式や差し込み式のため比較的簡単ですが、型番の互換性を必ず確認してください。また、岩場が多いルートではバスケットが邪魔になることもあるため、外して持ち歩く登山者もいます。外したバスケットはポケットやザックのサイドポーチに入れておくと、必要な場面ですぐ取り出せます。

次の行動

次の山行の前に、自宅の廊下や近所の平地でストックを持ち、肘90度の位置を実際に確認してみてください。その長さをメモしておくと、現地でゼロから調整する手間が省けます。先ゴムとスノーバスケットがザックに入っているかどうかも、出発前のチェックリストに加えておくと安心です。YAMATOMOでは認定ガイドへの相談や、登山仲間との装備に関する情報交換もできます。

参考資料

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