スタッフバッグとは、ザックの中身を種類ごとに小分けにする袋のことです。素材や形状はさまざまありますが、「どの袋に何が入っているか」をザックを開けた瞬間に判断できるかどうかが、実際の山行での使い勝手を大きく左右します。色分けはその判断を最も手軽に速くする方法です。
色分け整理を「なんとなくやっている」人は多いのですが、カテゴリの割り当てに一貫したルールがないと、山行を重ねるうちに「あの袋はどの色だったか」と迷い始めます。この記事では、色分けの考え方・カテゴリの切り方・素材と形状の選び方・使い始めるまでの手順を順に示します。
色分けが機能する理由と限界
人が色を識別する速度は、文字を読む速度より速いとされています。ザックのなかを手探りで探すとき、袋の形や大きさが似ていても、色が違えば一瞬で区別できます。これが色分け整理の根拠です。
ただし、色分けには前提があります。「この色=このカテゴリ」というルールを自分のなかで固定し、全山行で同じ体系を使い続けることです。山行のたびに割り当てを変えると、パニックになりやすい緊急時に混乱を招きます。一度決めたら変えない、というシンプルな運用が重要です。
また、色数を増やしすぎると視覚的な識別速度が落ちます。実用的な上限は5〜6色程度で、それ以上は文字ラベルや形状との組み合わせで補うのが現実的です。
カテゴリの切り方——何を一つの袋にまとめるか
色分けを始める前に、「何をひとまとめにするか」を決める必要があります。以下は一般的な切り方の一例です。
用途で切る基本の5カテゴリ
- 食料・行動食、内容例:行動食、非常食、調味料、推奨色の傾向:オレンジ・黄色(視認性が高い)
- 衣類・防寒、内容例:予備のミドルレイヤー、手袋、帽子、推奨色の傾向:青・水色(落ち着いた色で量が多い)
- 雨具・防水、内容例:レインウェア上下、ゲイター、推奨色の傾向:黄緑・蛍光色(緊急時に取り出しやすい)
- 衛生・救急、内容例:薬、絆創膏、日焼け止め、歯ブラシ、推奨色の傾向:赤(救急イメージに合わせる)
- 電気・通信、内容例:バッテリー、ライト、ケーブル、地図、推奨色の傾向:黒・グレー(機器イメージ)
この表はあくまで一例です。自分の装備構成に合わせて統合・分割してください。たとえば「電気」と「ナビ」を分けることも、「衛生」と「救急」を一つにすることも合理的です。
カテゴリを切るときの判断基準
- 取り出す頻度が近いものは同じ袋にまとめる。行動食と地図は取り出し頻度が高いですが、用途が異なるため別袋の方がよい場合が多いです。
- 濡れてはいけないものは防水袋を一つ用意する。衣類や電気機器は素材にかかわらず、防水ドライサックに入れることを基本にします。
- 緊急時に素早く出すものは色・位置を固定する。救急セットは「赤い袋、常に右サイドポケット」のように場所まで決めると取り出しが速くなります。
スタッフバッグの素材と形状を選ぶ
色分け整理に合った袋を選ぶときは、素材・形状・容量の三点を確認します。
素材の種類
ナイロン(撥水加工あり)は軽量で圧縮しやすく、最もよく使われます。完全防水ではないため、濡れに弱い内容物には不向きです。
ドライサック(完全防水)はシーム溶接やロールトップ構造で水の侵入を防ぎます。重量はやや増しますが、衣類・電子機器・ファーストエイド用品には防水素材を選ぶのが原則です。特にテント泊の場合、突然の雨や渡渉時のリスクが高まります。
メッシュ素材は中身が見える利点がありますが、防水性はゼロです。食料や衛生用品を整理するサブ袋として使い、ドライサックの内側に入れるという組み合わせも有効です。
形状と容量の目安
スタッフバッグは細長い円筒形が多く、ザックの隙間に差し込みやすい設計です。容量の目安は以下のように考えると選びやすいです。
- 1〜3L:小物(救急、電気系)
- 5〜8L:衣類1〜2枚、食料1日分
- 10〜15L:シュラフ、レインウェア上下など嵩張るもの
容量が大きすぎる袋を使うと、中で内容物が動いてザック内のバランスが乱れます。内容物を詰めたときに袋が少し余る程度のサイズが使いやすいです。
色分け体系を実際に作る手順
以下の手順で進めると、最初の山行から迷わずに運用できます。
- 現在の装備を全部並べる。持ち物を一度テーブルや床に出し、視覚的に確認します。
- カテゴリを3〜5つ決める。前述の基本5カテゴリを参考に、自分の装備量に合わせて統合・分割します。
- 各カテゴリに色を1色ずつ割り当てる。色は直感で決めて構いませんが、赤を救急に割り当てるなど、一般的なイメージと合わせておくと他の登山者と行動するときに混乱しにくいです。
- 割り当てた色と内容を一枚のメモにまとめる。スマートフォンのメモアプリに保存しておくと、買い替え時に色を統一しやすくなります。
- 同色の袋をまとめて購入する。同じブランドのシリーズで揃えると色のばらつきが減ります。異なるブランドの「赤」は色調が大きく異なる場合があるため、実物を確認するか、一度に同じシリーズで揃えるのが理想的です。
- 山行後に中身を入れ替えず、袋ごと補充・管理する習慣をつける。「赤い袋の中身は常に補充済み」という状態を保つと、出発直前の確認が速くなります。
運用でつまずきやすいポイント
同系色の袋が増える問題。市販品は「赤・青・緑・オレンジ」など原色系が多いですが、ブランドによって「濃い青」と「明るい青」が混在しがちです。薄暗いテント内や早朝の行動では色の識別が難しくなります。類似色は同じカテゴリに使い、必要なら袋に小さなタグを縫い付けるか、防水マーカーで記号を書く方法も有効です。
重さと防水のトレードオフ。スタッフバッグは何枚も重なれば無視できない重量になります。ドライサックは軽量モデルでも1枚あたり数十グラムあり、5〜6枚使えば合計で数百グラムになることがあります。日帰り登山であれば撥水ナイロンで十分な場合が多く、防水を徹底するのはテント泊や沢沿いのルートを歩くときという判断も合理的です。
山行の形態が変わると体系が崩れる。日帰り中心から泊まり山行に移行すると持ち物が増え、当初のカテゴリに収まらなくなります。このタイミングで体系を見直す機会と捉え、カテゴリと色の対応表を更新します。「追加するときは既存の色に合わせて同じシリーズの袋を買う」というルールを最初から決めておくと、体系の一貫性を保ちやすくなります。
次の行動
まず手持ちの装備を全部並べ、3〜5つのカテゴリに振り分けてみてください。カテゴリが決まれば、対応する色の袋を揃える段階に進めます。YAMATOMOの加盟店検索では登山ショップを探すことができますので、実物の色や素材を確認してから購入するのに役立ちます。色と内容の対応メモは、最初の山行前にスマートフォンに保存しておくことをおすすめします。