著者 YAMATOMO 編集部 公開日 約9分で読めます

御嶽山の9月——噴火から12年、火山防災月間に剣ヶ峰へ登る

火山の稜線を前に、ヘルメットと登山ザックを着けて立つ登山者のイメージ
AI生成によるイメージです。現地や現在の状況を撮影した実写ではありません。

2026年9月の御嶽山は、剣ヶ峰の山頂まで登ることができます。ただしそれは、山が安全になったからではありません。御嶽山火山防災協議会によれば、火口周辺には災害対策基本法第63条第1項にもとづく警戒区域が設定され、立入が禁止されています。噴火警戒レベルは1のままで、登山道はその外側に、期間を区切って開かれた細い回廊です。2014年9月27日の噴火から12年。長野県が8月26日から9月27日までを「信州 火山防災月間」とするこの時期に、この山をどう歩くかを整理します。

2026年の御嶽山は、10月14日正午まで剣ヶ峰に登れます

木曽町の案内では、黒沢口登山道の規制緩和は2026年7月1日午前8時から10月14日正午までで、対象区間は黒沢十字路から剣ヶ峰頂上までです。王滝村の案内では、王滝口も7月10日午前9時から、田の原の駐車場を出て王滝頂上を経由し剣ヶ峰へ至るルートと、王滝頂上から二の池トラバースを経て黒沢十字路へ抜けるルートが通行できます。2026年9月時点では、長野県側の二つの主要ルートのどちらからでも山頂に立てます。噴火警戒レベルは1、その呼称は「活火山であることに留意」です。

気をつけたいのは、これが「解除」ではなく「緩和」だという点です。ベースにあるのは警戒区域としての立入禁止で、そこへ夏から秋の一定期間だけ穴を開ける運用になっています。紅葉が色づく9月下旬から10月上旬は、その穴が閉じる直前の数週間にあたります。10月14日正午という期限を、計画の一行目に書いておくべきだと考えます。ここまでは長野県側の話です。岐阜県は、飛騨小坂登山口(濁河)などを登山届の対象に挙げたうえで、御嶽山は地元市町村により入山規制中(一部エリアを除く)と案内しています。岐阜県側から入るなら、下呂市と岐阜県の案内を別に確認してください。

王滝村の案内では、9合目から奥の院方面、王滝頂上から奥の院方面、そしてお鉢めぐりの登山道は、今年度も引き続き入山規制の対象です。木曽町も、八合目の女人堂から三ノ池へ向かうルートは天候や登山道の状況によって通行できなくなる場合があると案内しています。山頂に立てることと、稜線を自由に歩けることは別です。

2014年9月27日、噴火警戒レベル1の山で58人が亡くなりました

内閣府の広報誌によれば、噴火は2014年9月27日午前11時52分に発生し、噴石が登山者を襲いました。死者58人、行方不明者5人。戦後最悪の火山災害とされます。そして当時の噴火警戒レベルも、1だったとされています。

この噴火は水蒸気噴火だったとされます。地下水が熱せられて一気に膨張する現象で、マグマそのものが上がってこないため、山体の膨らみのような分かりやすい前兆が出にくいと説明されます。レベル1のキーワードは「活火山であることに留意」です。突発的な噴火の可能性は残り、「噴火しない」「火口の外なら安全」という意味ではありません。レベルは観測の結果であって、安全の保証ではないと考えます。

加えて、あの日は土曜日で、紅葉の時期で、時刻は昼どきでした。山頂に人が最も集まる条件が三つ重なっています。火山のリスクは山の側だけで決まるのではなく、そこに何人いるかという登山者側の事情との掛け算になります。9月下旬の御嶽山は、12年前とほぼ同じ条件が揃う季節だと考えます。

この12年で山に加わったのは、逃げ込める場所と、名簿です

山頂に運び上げられたコンクリートの箱

噴火後、山頂周辺には退避用のシェルターが整備されました。信濃毎日新聞は2017年の記事で、木曽町側は御嶽頂上山荘を撤去して跡地にシェルターを新設し、王滝村側は王滝頂上山荘を避難所に改修する計画だと伝えています。国の制度もこの噴火が起点で、内閣府は2015年12月に「活火山における退避壕等の充実に向けた手引き」をまとめました。

登山届は、噴火のあとに効いてくる

長野県は登山安全条例を定め、2016年7月1日から指定登山道を通る際の登山計画書の届出を義務づけています。指定登山道は県が定めるもので、直近では2025年3月10日に変更されました。岐阜県はさらに踏み込んでいます。「北アルプス地区及び活火山地区における山岳遭難の防止に関する条例」は2014年12月1日に北アルプス地区を対象として実施され、噴火を受けて2015年4月1日に御嶽山と焼岳の一部が対象に加わりました。5万円以下の過料はこれらの地区で2016年12月1日から適用され、対象エリアは2022年4月18日に変更されています。

同じ一つの山でも、岐阜県側の対象エリアでは、届け出ずに入ると5万円以下の過料の対象になります。制度の差はあっても、登山者にとっての意味は変わりません。登山届は、噴火したあとに「誰が山にいたか」を確定させる、ほとんど唯一の名簿になります。自分のためというより、捜す側のために置いていく一行だと考えたほうが、提出の動機は続くのではないでしょうか。

火山防災月間の中身は、ヘルメットと「無線が聞こえるか」です

長野県の「信州 火山防災月間」は8月26日から9月27日までです。8月26日は1911年に日本で最初の火山観測所が浅間山に置かれた日にちなむ「火山防災の日」、そして9月27日は御嶽山の噴火の日。この山を挟むように一か月が区切られています。

信濃毎日新聞によると、初日の8月26日、御嶽山のロープウェイ山麓駅では県や木曽町の職員、木曽署員ら6人が登山者にヘルメット着用を呼びかけ、登山計画書の提出状況をアンケートで調べました。あわせて行われたのが、防災行政無線の聞き取り調査です。登山道や山小屋などで町職員ら約15人が放送を聞き取り、明瞭さなどを評価しました。

派手さのない作業です。ただ、この「聞こえるか」の確認こそが、火山防災月間の中心だと考えます。2014年、噴火を山頂の登山者に伝える手段は現場にありませんでした。設備を置いて終わりにせず、毎年人を立たせて届く範囲を測り直す。この繰り返しでしか、装置は本当に使えるものにならないのではないでしょうか。王滝登山口の田の原には御嶽山ビジターセンター「やまテラス王滝」が、木曽町側には「さとテラス三岳」があります。火山防災の展示を見てから登山口に立つ、という順番も取れます。開館期間は施設ごとに異なるため、訪ねる前に確認してください。

まとめ:御嶽山の9月は、火山の歩き方を学び直す時間です

今年7月26日、遺族らでつくる「山びこの会」の11回目の慰霊登山に、気象庁の職員4人が初めて同行しました。SBC信越放送によれば、遺族と気象庁の意見交換会をきっかけに実現したものです。息子と息子の婚約者を亡くした所清和さんは、報道の中で「減災をして、死者はいらないです御嶽山で」と話しています。

9月にこの山へ行くなら、実務は三つです。10月14日正午という期限を計画に書くこと。登山届を出すこと(長野県側は条例で義務、岐阜県側の対象エリアは過料つきの義務です)。ヘルメットを持っていくこと。どれも噴火を防ぐ手段ではなく、噴火したときに自分と家族の選択肢を残すための手段です。12年前の9月27日も、紅葉の始まった土曜日でした。そのことを思い出しながら歩くと、この山の景色は少し違って見えるはずです。

参考資料・出典

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