著者 YAMATOMO 編集部 公開日 約8分で読めます

山の地震——山で地震に遭ったら

山の地震——山で地震に遭ったら(イメージ)

山で地震に遭うと、平地とは異なる危険が同時に複数発生します。揺れそのものより、その直後に起きる落石・崖崩れ・雪崩(冬季)・登山道の崩落が命取りになることが多く、揺れが収まった瞬間に「助かった」と判断するのは早計です。

この記事では、山行中に地震が来たときに何が起き、どの順番で何をすればよいかを整理します。山岳地形ならではのリスクと、その場で取れる判断基準を具体的に示すことを目的にしています。

山の地震は「揺れの後」が本番

平地の地震は揺れが主な危険ですが、山では揺れが引き金になって二次災害が連鎖します。代表的なものが以下の三つです。

落石・岩盤崩壊:山の斜面には、長年の風化で「乗っているだけ」の状態になっている岩が無数にあります。小さな揺れでも動き出し、数百メートル下まで転がってきます。揺れを感じた瞬間に頭上と斜面上方を確認する習慣が重要です。

崖崩れ・土砂崩れ:特に雨後や積雪が融けた直後は地盤が緩んでいます。地震が引き金になって、揺れが止まってから数分後に崩れることもあります。

登山道の消失:崩落で登山道そのものがなくなる場合があります。揺れが収まっても「往路と同じルートで戻れる」とは限らないことを頭に置いておく必要があります。

揺れを感じた瞬間の行動

揺れている最中に人は正確に判断できません。事前に「こうなったらこうする」を決めておくことが、パニックを防ぐ唯一の方法です。

場所別の第一行動

稜線・尾根上にいる場合稜線は両側への転落リスクが高まります。揺れを感じたらすぐに姿勢を低くし、登山道の中央に身を伏せます。ストックを突いて体を安定させ、風に煽られるようなザックカバーや雨具は揺れが収まってから対処します。

沢沿い・谷底にいる場合最も危険な場所のひとつです。上流・両岸の崩壊物が一気に流れ込む「土石流」の通り道になります。揺れを感じたら、反射的に斜面を登って高い場所へ移動することを優先します。揺れが収まってからでは遅い場合があります。

岩場・鎖場にいる場合クライミングの体勢では体を固定することが最優先です。岩にしがみつき、頭を岩に向けて落石が当たりにくい姿勢を取ります。ハーネスやロープを使っている場合は、器具に過大な衝撃をかけないよう注意します。

山小屋・避難小屋の中にいる場合建物の構造によりますが、出入り口付近は比較的安全とされる一方、山岳地の建物は平地の建物と構造が異なります。揺れている間はテーブルや柱の近くで頭を守り、揺れが収まってから外の状況を確認します。ストーブや調理器具の火は揺れが収まり次第すぐに消します。

揺れが収まった後の判断手順

揺れが止まった後こそ、冷静な判断が必要です。次の順番で確認してください。

  1. 自分と同行者のけがを確認する揺れの最中に転倒・落石を受けたケースは少なくありません。興奮状態では痛みを感じにくいことがあるため、全身を系統的に触って確認します。歩行困難なけががある場合は、その場を動かず救助要請を最優先にします。
  1. 頭上と周囲の斜面を見渡す落石・崩落が続いていないかを確認します。砂煙・音・振動が続いている間は、安全な場所に留まります。「揺れが止まった=安全」ではありません。
  1. 現在地の安全性を評価する今いる場所が引き続き安全かどうかを判断します。崖下・沢筋・不安定な斜面にいる場合は、安全な場所(開けた尾根上・岩盤が安定した平坦地)へ移動します。
  1. 通信を試みる携帯電話・衛星通信機器で状況を確認します。山岳エリアは電波が届かない場所も多く、稜線など電波の届きやすい場所へ移動してから試みることが有効です。登山届を出している場合、家族や登山計画書の提出先(各都道府県警察の山岳遭難救助隊など)に状況を連絡します。
  1. 下山か待機かを判断する状況が不明なまま行動を続けることが最もリスクを高めます。判断基準は後述します。

下山か待機かの判断基準

山での地震後の最大の判断は「すぐ下山するか、その場で待つか」です。どちらが正解かは状況によりますが、判断の軸は「今のルートは通れるか」「余震で状況が悪化しないか」の二点です。

下山を優先すべき状況

待機を優先すべき状況

待機する場合は、救助要請を早めに行うことが重要です。「自力でなんとかなるかもしれない」という判断の先送りが、救助のタイミングを逃す原因になります。救助要請は110番(警察)または119番(消防)、山域によっては専用の山岳救助連絡先が設けられています。入山前に確認しておくことをお勧めします。

地震リスクを事前に下げる準備

地震は予測できませんが、被害を小さくする準備は入山前にできます。

地震情報と火山情報の確認:気象庁は火山の活動状況と地震情報を公開しています。活火山周辺の山域は火山噴火予知連絡会の情報も参考になります。入山前に現地自治体・山小屋が発表している最新の注意情報を確認することが基本です。

登山届の提出:地震後に行動不能になったとき、登山届が救助の出発点になります。提出先は都道府県警察の登山届受付窓口またはオンラインサービスです。

ヘルメットの着用:落石に対する唯一の直接的な防護装備です。岩場・沢・急峻な稜線では着用が推奨されています。地震時の落石リスクを考えれば、平時からの習慣が有効です。

非常用ビバーク装備:緊急停滞を強いられたときのために、エマージェンシーシート・予備食・水・簡易救急セットをザックに入れておく習慣が、地震後の待機を「生存可能な待機」にします。

次の行動

まず、次の山行の前に登山届の提出先と、入山する山域を管轄する自治体・山小屋の連絡先を調べておいてください。ヘルメットをまだ持っていない場合は、岩場のある山域では導入を検討することをお勧めします。同行者と「地震が来たらこうする」を事前に一言確認しておくだけで、現場での判断速度が変わります。YAMATOMOの認定ガイドへの依頼機能を使えば、安全管理の考え方を熟知したガイドと山行の計画を立てることもできます。

参考資料

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