「石鎚山に登ってみたいけれど、鎖場が怖い」という問いを持ったまま、計画を立てられずにいる方は多いはずです。結論から言えば、石鎚山の鎖場にはすべて巻き道(迂回路)が設けられており、鎖を使わなくても山頂(弥山)まで到達できます。ただし「巻けるから簡単」とは言い切れません。巻き道にも急な登り下りがあり、足元が滑りやすい区間もあります。
この記事では、成就社(じょうじゅしゃ)を起点にした表参道ルートを軸に、鎖場と巻き道それぞれの特徴、判断のしかた、装備と準備の考え方を順に示します。初めて石鎚山を訪れる方が「自分はどちらを選ぶか」を事前に決めて登り始められるよう構成しました。
成就社までの到達と、そこからの全体像
石鎚山の一般的な登山口は、ロープウェイの山頂駅から歩いて成就社に至るルートです。成就社は標高約1,450メートルに位置する神社で、ここから本格的な登山道が始まります。成就社から弥山(みせん、標高約1,974メートル)までは、一般的に片道3〜4時間が目安とされていますが、鎖を使うか巻き道を選ぶかで所要時間は変わります。最新の登山口情報やロープウェイの運行状況は、石鎚登山ロープウェイや西条市・久万高原町の公式情報で事前に確認してください。
成就社からのルートは「試しの鎖」「一の鎖」「二の鎖」「三の鎖」の4か所に鎖場があります。それぞれに巻き道があり、標識で案内されています。全体の道型は明瞭で、迷いにくいルートですが、天候が崩れると視界や足場の状況が急変します。
鎖場と巻き道、それぞれの性格
試しの鎖
成就社を出て最初に現れる鎖場です。鎖の長さは4か所の中でも長めで、岩の傾斜が急な部分があります。「試し」という名前のとおり、鎖に慣れているかどうかを確かめる場所と捉えられています。巻き道はよく整備されていますが、土の斜面を登り下りする箇所があり、濡れているときは滑りやすいです。
一の鎖・二の鎖・三の鎖
山頂に近づくにつれて傾斜は増します。三の鎖は特に長く、岩が垂直に近い場面もあります。巻き道は設けられていますが、二の鎖・三の鎖の巻き道は急な階段状の登りが続く区間があり、膝や足首への負担は小さくありません。「巻き道のほうが疲れた」という声が出るのは、この区間の階段の連続が主な理由です。
鎖場を選ぶかどうかの判断基準
- 岩登りが初めて・高所が苦手、鎖:推奨しない、巻き道:選ぶ
- 濡れた岩・雨天・霧、鎖:推奨しない、巻き道:選ぶ
- 混雑時(鎖に行列)、鎖:時間がかかる、巻き道:効率的
- 腕力・握力に不安がある、鎖:推奨しない、巻き道:選ぶ
- 岩場の経験があり、乾いた天候、鎖:選択肢になる、巻き道:どちらでも
基本的な判断は「乾いた岩・十分な体力・高所への耐性」の三つが揃っているかどうかです。一つでも不安があれば巻き道を選ぶのが保守的で適切な判断です。鎖場は一方通行の習慣(登り優先)があり、引き返しにくい場面もあります。
巻き道だけで登るときの注意点
巻き道を選んでも、石鎚山は体力を要する山です。成就社から弥山までの標高差は約500メートルほどで、アップダウンを繰り返しながら高度を上げていきます。特に注意が必要な点を以下に示します。
足元の変化に備える 登山道は土・木の根・岩・木道が混在します。靴底に十分なグリップがあるトレッキングシューズ(くるぶしより高い丈のもの)が基本です。スニーカーやサンダルは転倒リスクが高く、推奨されません。
天候の急変を前提にする 四国の山は太平洋からの湿気の影響を受けやすく、午後から雲が湧くことが多いです。気象庁の山岳予報や地域の天気予報を出発前日と当日朝に確認してください。濡れた巻き道の階段は下山時に特に滑りやすく、下りのほうに時間と注意を割く意識が必要です。
余裕のある時間設定 成就社でのロープウェイ最終便の時刻は季節や曜日によって異なります。下山完了から逆算して余裕を持った出発時刻を決め、山頂で長居しすぎないようにしてください。最終便の時刻は必ずロープウェイ事業者の公式情報で確認してください。
弥山から天狗岳へは別の話 弥山は石鎚山の最高峰ではなく、最高点は隣の天狗岳(てんぐだけ)です。弥山から天狗岳への道は岩稜(がんりょう:岩がつながった尾根)で、巻き道がなく、高度感があります。初心者や鎖場を巻いてきた方は弥山を山頂とするのが現実的な選択です。
成就社から弥山までの歩き方・手順
- 成就社で準備を整える トイレ、水の補給、服装の調整をここで済ませます。売店や案内板があり、天候や道の状態を確認できる場合があります。
- 八丁(はっちょう)坂を下る 成就社を出て最初は下り坂になります。帰路はここを登り返すことを頭に入れておきます。
- 試しの鎖の分岐で判断する 乾いた天候で体力に余裕があれば鎖を選ぶ選択肢があります。不安があれば迷わず巻き道へ進みます。
- 一の鎖〜三の鎖を通過する 各鎖場の手前に分岐標識があります。鎖と巻き道のどちらかを選び、前の人との間隔を保って進みます。
- 二の森(にのもり)分岐を確認する 途中に二の森方面への分岐があります。弥山を目指す場合はそのまま直進します。
- 弥山の山頂社に到達する 石鎚神社頂上社があります。天気がよければ瀬戸内海や剣山系の眺望が開けます。
装備の最低ライン
成就社ルートは整備されていますが、装備を軽く見ると事故につながります。以下は最低限の考え方です。
- 靴:くるぶしを覆うトレッキングシューズ。ソールの摩耗が進んでいないもの
- 雨具:レインジャケットとレインパンツ(上下セパレート型)。折りたたみ傘だけでは不十分
- 行動食と水:山頂付近に山小屋がありますが、営業日・営業時間・在庫は公式情報で確認してください。自分で十分な量を携行することが基本
- ヘッドライト:下山が遅れたときのため。電池は新品か充電済みのものを
- 防寒着:山頂は麓より気温が低く、秋以降は特に冷えます。フリースや薄手のダウンを一枚
次の行動
まず気象庁の山岳天気予報と石鎚登山ロープウェイの公式情報で、登る日の天候・運行状況・最終便の時刻を確認してください。その情報をもとに出発時刻と「鎖を使うか・使わないか」の方針を決めてから荷物を整えると、当日の判断がシンプルになります。YAMATOMOの「ベースキャンプ」機能では石鎚山周辺の登山仲間を探すこともできますので、初めての山行に同行者を求めている場合は活用してみてください。
参考資料
- 石鎚山系登山に関する情報(西条市・久万高原町の公式観光・登山案内)
- 石鎚登山ロープウェイ(公式サイト)
- 気象庁 山の天気(登山地点の天気予報)
- 警察庁・愛媛県警察 山岳遭難統計