富士山の9月10日は、4ルートの開山期間が終わる日です。2026年も吉田・須走・御殿場・富士宮の各ルートは開山期間を終了しました。ただし、道路の通行止めや救護所・山小屋・トイレの終了日時は、区間や施設によって異なります。閉山直前の9月8日から9日には荒天のなかで遭難が相次いだと報じられました。日付だけを目標にせず、天候と実際の通行・営業状況で判断する必要があります。
閉山とは、設備が外れ、山頂が氷点下へ向かうことです
富士登山オフィシャルサイトの2026年案内では、吉田・須走は7月1日、御殿場・富士宮は7月10日に開山し、開山期間は9月10日まででした。静岡県側では同日17時から山頂へ向かう登山道が冬期閉鎖となりましたが、富士宮の五〜六合目は別の供用期間です。吉田の八合目より下の下山道には9月11日午前までの利用期間が設けられました。
「9月10日まで全施設がそろう」わけでもありません。富士登山オフィシャルサイトの更新された2026年案内では、富士宮八合目の富士山衛生センターは期間を短縮して9月4日10時に終了。救護所や山小屋を当てにする計画では、登山道の開山期間と別に各施設の営業を確認します。
止まるのは人と建物だけではありません。富士登山オフィシャルサイトは、開山期なら台風で崩れた登山道もすぐ補修されるが、閉山後は「登山のための歩道整備は一切行われません」と明記しています。夏のあいだ登山道を「道」として成立させていた手入れが打ち切られ、残るのは地形としての斜面だけです。
気象庁が公開する富士山の平年値では、山頂の月平均気温は9月が3.5度、10月が氷点下2.0度。日最低気温の平均は10月が氷点下5.1度で、平均風速も9月の9.4メートルから10月は10.9メートルへ上がります。月平均は秋の冷え込みの目安ですが、9月にも氷点下となる日があり、閉山日からの日数で気温は判断できません。設備が外れる日付と、山が冬へ入っていく時期は、そう遠くないところに並んでいます。
2026年9月8日から9日、最終日の直前に起きたこと
J-CASTニュースによれば、静岡県の「富士登山安全情報」は8日夕方、天候が荒れてきたとして中止や下山も含めた判断を促し、9日には「雨風共にとても強いです。登りに来られた方も、帰られた方多数です。大変危険です!命を守る行動をお願いします!」と表現を強めました。それでも登る人は途切れず、遭難が相次ぎました。アルピニストの野口健さんは9日、Xで登山道の閉鎖を求める趣旨の投稿をしています(J-CASTニュース)。
ここからは編集部の見方です。「最終日だから登る」という計画は、天気を見て決めるという登山の基本を出発前から放棄しています。日程が動かせないと決めた瞬間、天候は「判断する変数」から「乗り越える障害」に格下げされます。しかもこの締切は9月10日という全国共通の1日に集中し、翌日から10か月近く登れなくなります。滑り込み登山は個人の無謀さであると同時に、締切が1日に集中する制度設計が生む現象でもあると考えます。
閉山後の通行止めは「自己責任」で片づく話ではありません
閉山後の富士山について、「危ないのは承知のうえ、自己責任で登る」という言い方を見かけます。しかし制度上は、自己責任で選べる状態になっていません。富士登山オフィシャルサイトによれば、冬期閉鎖の対象となる登山道は道路法第46条に基づく通行禁止で、違反すると6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処される可能性があるとされています。注意喚起ではなく、道路の通行止めと同じ枠組みです。
山梨県警察も、万全な準備をしない登山者の夏山期間以外の登山は「禁止」であること、登山計画書の作成・提出、携帯トイレの持参の3点を挙げ、風速20メートル以上の風が吹くことも珍しくないと警告しています。
2026年の開山期には、静岡県側3登山口の入山料4,000円と事前学習、吉田ルートの通行料4,000円と1日4,000人の上限などが設けられました。開山期の受付が終わっていても、閉鎖区間に入ってよいという意味にはなりません。
救助費用の負担については、静岡・山梨両県で検討が進んでいます。山梨県は9月14日、県の防災ヘリによる山岳救助を原則有料とし、一定の準備をした登山者を免除する方向性を示しました。2027年9月の施行を目指す段階で、2026年9月23日時点の施行済み制度ではありません。費用の有無にかかわらず、通行止めと悪天候時の中止判断を守ることが先です。
閉山期は、積雪・強風と救助の難しさが重なります
開山期と閉山期の登山者数は同じ方法で把握されていないため、単純な人数比から死亡リスクを計算することはできません。判断の基礎にすべきなのは、公式に示された通行止めと、積雪・凍結・強風、山小屋や救護所が利用できないという現地の条件です。
山梨県警察は、アイスバーンではアイゼンやピッケルが効かなくなることもあると警告しています。富士山の長い斜面では滑落を止められない危険があり、悪天候時には救助も難しくなります。冬山装備を持つだけで安全になるわけではありません。
秋の富士山を歩きたいなら、五合目から下へ切り替える
では秋に富士山へ行きたい人はどうするか。行き先を五合目から下へ切り替えることです。静岡県の道路情報によれば、2026年9月時点で富士宮口・御殿場口・須走口の五合目へ通じる県道3ルートはいずれも通行可能。登山道は9月10日午後5時に閉鎖されましたが、富士宮ルートのみ五合目から六合目の区間は通行可能で、閉鎖時期は今後の積雪状況などを見て決めるとされています。
ただし、その道路にも期限があります。富士宮市観光協会によれば、2025年の富士山スカイラインは11月10日午後2時からの冬期閉鎖の予定が前倒しされ、11月9日午前11時に二合目の旧料金所より上が全面通行止めになりました。五合目に車で上がれるのは、閉山後のおよそ2か月だけです。秋の五合目周辺でも、降雪・凍結や急な通行止めを確認し、当日の条件に応じて中止してください。
五合目といっても標高は登山口ごとに違い、富士登山オフィシャルサイトによれば富士宮口が2,400メートル、御殿場口新五合目は1,440メートル。山頂が氷点下の日は、五合目でも風が吹けば体感は氷点下に近づきます。雨具と防風の上着、手袋は日帰りでも持ち、閉山後は利用できるトイレが限られるので、営業場所を確認し携帯トイレを用意します。県道の通行可否と六合目から先の扱いは年や積雪で変わるため、静岡県や富士宮市の案内で当日の状況を確認してください。
まとめ:9月10日は締切ではなく、季節の境目です
9月10日の開山期間終了後、山頂への登山道は通行止めとなり、山小屋や救護所も営業を終了していきます。五合目周辺に利用できる道路や施設が残っていても、山頂への登山が可能という意味ではありません。気温や風は日ごとに変わるため、「最後の1日」や閉山日からの日数を安全の根拠にしないでください。
山頂登山を計画するなら、翌年の正式な開山期間と通行状況の発表を待ちます。2027年の開山日や各施設の営業は、2026年と同じとは限りません。秋は開放されている五合目周辺や麓のコースを、当日の条件に合わせて楽しむ選択肢があります。山頂を諦めることは、秋の富士山を諦めることではありません。
確認の基本は県や市の道路情報です。そのうえで「今日の五合目はどうだったか」のような公式発表に載らない粒度の話は、歩いた人に聞くのが早いこともあります。YAMATOMO の山チャットのように山ごとに人が集まる場を、その補足として使う手もあります。
参考資料・出典
- 富士登山オフィシャルサイト「夏山期間以外の富士登山について」
- 富士登山オフィシャルサイト「各登山口と登山ルートについて」
- 静岡県「富士山登山道周辺の道路情報」
- 静岡県「静岡県各3登山口における登山規制の実施」
- 山梨県「令和8年度の富士登山について」
- 山梨県警察「富士登山情報」
- 富士宮市「富士宮ルートの山室や施設」
- 富士宮市観光協会「【重要】登山道全面冬期閉鎖・富士山スカイライン冬期閉鎖について」
- 環境省関東地方環境事務所「令和7年夏期の富士山登山者数について」
- 気象庁「富士山 平年値(年・月ごとの値)」
- J-CASTニュース「悪天候の富士山に『滑り込み登山』、遭難相次ぐ 野口健氏『登山道の閉鎖ぐらいした方が』」
- 東京新聞「富士山の閉山期 ヘリ救助有料化の検討」
- 中日新聞「閉山期の富士山 遭難やまず」
- 富士登山オフィシャルサイト|2026年の各施設の供用期間
- 山梨県|山岳救助有料化の方向性(2026年9月14日)