著者 YAMATOMO 編集部 公開日 約8分で読めます

登山中の捻挫——テーピングと下山判断

登山中の捻挫——テーピングと下山判断(イメージ)

下山途中に足首をひねった、あるいは岩から飛び降りた瞬間に「グキッ」という感覚があった——そのとき最初に知りたいのは「このまま歩けるか」という一点のはずです。この記事では、山中で捻挫が起きたときに自分でできる応急処置の手順と、「歩いて下山できる状態かどうか」を判断する基準を具体的に示します。

捻挫は靱帯(じんたい)の損傷です。靱帯とは骨と骨をつなぐ繊維状の組織で、足首の場合は外側の前距腓靱帯(ぜんきょひじんたい)が損傷しやすく、内側に体重が乗ったまま足首が内返しになるときに起こります。軽度(靱帯の伸び)から中度(部分断裂)、重度(完全断裂や骨折を伴う場合)まで幅があり、山の中では画像診断ができないため、判断は症状の観察に頼ることになります。

まず5分間、動かさない

捻挫直後にやることは「RICE処置」の頭文字で覚えられています。Rest(安静)・Ice(冷却)・Compression(圧迫)・Elevation(挙上)の四つです。ただし山の中では氷はなく、沢の水を使う場合も低体温や感染のリスクがあるため、冷却は状況に応じて判断してください。現実的には安静・圧迫・挙上の三つを優先します。

まず座れる場所に移動し、患部を動かさずに5分程度休みます。この時間で痛みがどの程度か、体重をかけられそうかを観察します。焦って立ち上がって歩き始めると損傷が広がります。

下山を続けるかどうかの判断基準

テーピングの前に、そもそも自力下山が可能な状態かを確認します。以下の三つを順番に確かめてください。

① 骨折の可能性を除外できるか

捻挫と骨折は症状が似ており、山中では区別が難しいです。次のいずれかに当てはまる場合は骨折の可能性が上がります。一般にオタワアンクルルールと呼ばれる判断基準で、外くるぶし(外果)または内くるぶし(内果)の後縁を指で押したときに強い圧痛がある、あるいは第5中足骨(小指側の足の甲の骨)の基部に圧痛がある場合です。これに加えて「受傷直後に4歩以上歩けなかった」場合も骨折を疑います。骨折の疑いがある場合は、自力歩行をできるだけ避け、同行者による支援や救助要請を検討してください。

② 受傷後に4歩歩けるか

地面が安定した場所で、ゆっくり4歩歩いてみます。強い痛みで体重を乗せられない場合は、テーピングで固定したとしても長距離の下山は難しいと考えてください。この段階で同行者がいれば状況を共有し、エスケープルートや救助要請の選択肢を一緒に考えます。

③ 下山ルートの距離と難易度

4歩歩けたとしても、残りのルートが急斜面・岩場・鎖場を含む場合は、テーピングで固定した状態でも転倒リスクが高まります。下山口まで2時間以内の平坦な道ならテーピングと慎重な歩行で対応できる可能性がありますが、それ以上の距離や技術的なルートが残っている場合は、無理に歩くよりも救助を求めることが安全な選択肢になります。迷ったときは保守的に判断してください。

テーピングの手順

自力下山を続けると判断した場合、テーピングで足首を固定します。山に持ち込むテープはキネシオロジーテープ(伸縮)よりも、非伸縮の白いホワイトテープが固定力の点で適しています。幅38mmが扱いやすいです。テープがない場合は包帯やストッキングタイプのサポーターで代用します。

以下は足首の外側捻挫(内返し)に対する基本的な固定の考え方です。

  1. アンカー(土台)を貼る:足の甲の上部と下腿(ふくらはぎの下部)に、テープの起点となる水平のアンカーテープを1〜2枚ずつ貼ります。肌に直接貼るときは毛をテープが引かないよう注意してください。
  2. スターアップを貼る:足の裏から外側を通って上に向かうように、U字型にテープを引き上げます。これが捻挫方向への動きを制限するメインの固定です。3〜4本並べて貼ります。
  3. ヒールロックを加える:かかとを外側から巻き込むようにテープを斜めに通し、反対側のアンカーにつなぐ形で貼ります。かかとのぶれを抑えます。
  4. 上からアンカーで留める:最初に貼たアンカーと同じ位置に、テープを重ねて固定します。
  5. 確認:貼り終えたら靴を履き、足首を軽く動かして固定感を確かめます。しびれや血色不良があればテープを巻き直してください。

テープを貼った後でも、下山中は一歩一歩の着地を意識し、段差や濡れた岩では慎重に体重を移してください。ストックがあれば両手で使い、患部への負担を分散させます。

下山後にやること

テーピングで下山できたとしても、それは「応急処置で乗り越えた」状態です。帰宅後または下山当日に整形外科を受診してください。靱帯の損傷度合いや骨折の有無はX線やMRIがないと確認できません。適切な治療をしないまま放置すると、靱帯がゆるんだ状態のまま固まり、慢性的な足首の不安定感(慢性足関節不安定症)につながることがあります。

受診の際は、受傷の状況(どの方向に足がねじれたか)、その後歩けたかどうか、どの部位に圧痛があるかを伝えると診察がスムーズです。

予防としての装備と歩き方

捻挫を起こしにくくするためには、足首をある程度保護するミッドカットまたはハイカットのトレッキングシューズが有効です。ローカットシューズや軽量なランニングシューズは軽量で歩きやすい反面、足首の保護は弱くなります。足首周辺の筋力(特に腓骨筋)を日常的に鍛えることも再発防止に役立ちます。

歩き方の面では、疲労が蓄積した下山後半に捻挫は起きやすいです。足が上がりにくくなってきたと感じたら、一歩の幅を小さくして足裏全体で着地するよう意識することが、リスクを下げる具体的な方法です。

次の行動

山に出かける前に、ファーストエイドキットにホワイトテープ(38mm幅)を1本加えてください。テーピングの手順は自宅で練習しておくと、いざというときに落ち着いて対応できます。捻挫歴がある方は、かかりつけの整形外科でテーピング方法や適切なサポーターの選び方を確認しておくと安心です。同行者と山行を計画する場合は、YAMATOMOの登山記録や認定ガイドへの依頼も、ルート選びや安全確認の参考になります。

参考資料

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