著者 YAMATOMO 編集部 公開日 約8分で読めます

ストックの手入れ——固着を防ぐ

ストックの手入れ——固着を防ぐ(イメージ)

シーズンを終えてストックを押し入れにしまい、翌春に取り出したら節が固まって回らない——そういった経験をした人は少なくないはずです。固着は「錆びた」「壊れた」ではなく、汚れと水分と圧力が重なった結果であるため、正しい手順で防げます。

この記事では、固着が起きる仕組みから、山行後の日常的な手入れ、シーズンオフ前の保管準備、固着してしまったときの対処まで、ストック固有のメンテナンス論点に絞って解説します。

なぜ固着するのか

ストックの節(伸縮部)が固まる原因は大きく二つあります。一つは泥・砂・塩分の堆積、もう一つは濡れたまま締め込んで保管することです。

アルミ製のストックは、泥や砂がシャフト内に入り込んだ状態で乾燥すると、管と管のあいだに微細な粒子が噛み込みます。塩分(汗や海沿いの湿気)は金属面を腐食させ、表面をざらつかせます。カーボン製のシャフトは腐食こそしにくいものの、内部に入った泥が乾いて固まる点は同じです。

フリップロック(レバー式)の機種とツイストロック(ねじ式)の機種では固着の起きやすい部位が異なります。フリップロックはレバー周辺の溝に泥が溜まりやすく、ツイストロックは締め付けリング内部のプラスチックパーツに汚れが蓄積しやすい傾向があります。どちらも「節を外してから洗う」という原則は共通です。

山行後の基本手入れ

固着を防ぐうえで最も効果的なのは、山から帰ったその日のうちに節をほぐして乾燥させることです。手順は次のとおりです。

  1. 節を全部抜く。ロックを解除し、シャフトをすべて引き抜いて分解します。フリップロック機種はレバーを開いてから引き抜き、ツイストロックは軽く逆回しして引き抜きます。
  2. 水洗いする。流水(水道水)でシャフト外面と内面を洗います。管の内側は細長いブラシ(ボトル洗い用などで代用可)を使うと泥が取り切れます。シャフト内に水を通して流すだけでも効果があります。
  3. ロックパーツを確認する。フリップロックのレバー溝、ツイストロックのリング内側に残った泥は歯ブラシで掻き出します。
  4. 立てて乾燥させる。節を抜いたまま、シャフトを縦に立てるか吊るして自然乾燥させます。このとき節を締め込んだまま乾かさないのが最大のポイントです。湿った状態で締め込むと、乾燥する過程で収縮・膨張が重なり、固着の下地が出来上がります。
  5. 乾いたら軽く潤滑処理(後述)。

雨の日や沢沿いを歩いた日は、シャフト内に水が入り込んでいることが多いため、分解洗浄はとくに念入りに行うことをお勧めします。

潤滑剤の選び方と使い方

節の摺動面(すべる面)に薄く潤滑剤を塗ると、汚れの噛み込みを抑え、開閉が滑らかになります。ただし種類の選択を間違えると逆効果です。

製品によって推奨する潤滑剤が指定されている場合もあります。取扱説明書や各メーカーの公式サポートページで確認しておくと安心です。

シーズンオフ前の保管準備

秋の登山シーズンを終えてから春まで保管するときは、日常の手入れより念入りな作業が必要です。

節を完全に抜いて保管するのが基本です。収納袋に入れる際も、シャフトを縮めて締め込んだ状態にしてはいけません。コンパクトにまとめたいなら、節を引き抜いた状態でまとめてから袋に入れます。

グリップ(ハンドル)の素材がコルクの場合、長期保管中にカビが発生することがあります。コルクは完全に乾燥させてから保管し、直射日光・高温多湿の場所は避けます。ゴムグリップはひび割れを防ぐために、直射日光の当たらない場所に置くのが望ましいです。

先端ゴム(バスケット・ゴムキャップ)は消耗品です。保管前に摩耗やひびを確認し、傷んでいれば交換しておくと翌春に慌てずに済みます。先端ゴムはメーカーや規格によってサイズが異なるため、純正品または互換品を購入する際は型番を確認してください。

固着してしまったときの対処

手順どおりに行っても、長年使ったストックや保管状態が悪かったものは固着していることがあります。力任せに回すと節やロック機構を壊すため、次の順で試してください。

  1. ぬるま湯に浸ける。固着した節の部分だけをぬるま湯(40〜50℃程度)に5〜10分浸します。熱で金属がわずかに膨張・収縮を繰り返すうちに、噛み込んだ泥や塩分が緩む場合があります。
  2. 布でしっかり握って回す。滑り止め付きの手袋や厚手のゴム手袋を使うと力が伝わりやすくなります。ツイストロックは「緩める方向」をあらかじめ確認してから回します(機種によって逆ねじのものもあります)。
  3. それでも動かない場合は専門店へ。シャフトやロック機構の構造を知らないまま強引にこじると、カーボンシャフトの割れやロックパーツの破損につながります。購入した登山ショップやメーカーのサポートに相談するのが確実です。

固着が繰り返される場合は、ロックパーツ(スプリング・リングなど)の経年劣化が原因のこともあります。部品交換で直ることも多いため、廃棄と判断する前に一度メーカーに問い合わせてみることをお勧めします。

次の行動

今シーズンの登山を終えたら、しまう前にストックを分解して水洗いし、節を抜いたまま乾燥させてください。それだけで翌春の固着リスクは大きく下がります。ロックパーツの劣化や先端ゴムの摩耗が気になる場合は、登山ショップで現物を見せて相談するのが早道です。YAMATOMOの加盟店検索から近くの登山ショップを探すこともできます。

参考資料

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