著者 YAMATOMO 編集部 公開日 約9分で読めます

登山のための筋トレ——週2回で変わるメニュー

登山のための筋トレ——週2回で変わるメニュー(イメージ)

「登山前に筋トレをしたほうがいい」とは聞くものの、何をどれだけやればいいのかわからない——そう感じている方は多いはずです。ランニングや歩行と違い、筋力トレーニングは「種目・負荷・頻度・休息」のすべてが絡み合うため、なんとなく始めても成果につながりにくい側面があります。

この記事では、登山に必要な筋力の特性を整理し、仕事や日常生活と両立しやすい週2回という頻度を前提にして、「何をどの順番で、どのくらいの強度でやるか」を具体的に示します。すでにウォーキングや有酸素運動を習慣にしている方が、次のステップとして取り組む想定です。

なお、持病や整形外科的な既往がある方は、メニューを始める前に医師に相談してください。強度の調整についても、身体の状態によって大きく異なります。

登山で使う筋肉はどこか

登山の動作を分解すると、主に三つの局面があります。登り(蹴り上げ)、下り(衝撃の吸収)、平坦な荷重歩行です。この三つに共通して関わるのが、大腿四頭筋(太もも前面)・ハムストリングス(太もも後面)・大臀筋(お尻)・腓腹筋とヒラメ筋(ふくらはぎ)の下肢四群と、体幹(腹直筋・腹斜筋・脊柱起立筋)です。

特に登山特有の負荷として忘れられがちなのが「下りの制動力」です。下山中は大腿四頭筋が伸びながら力を発揮する「伸張性収縮」を長時間続けます。この動作は平地のトレーニングで鍛えられにくく、準備不足だと下山後半に膝が笑う(力が抜けてガクガクする)原因になります。筋トレのメニューを組む際は、この伸張性収縮を意識した種目を必ず入れることが重要です。

体幹は、ザックを背負った状態で姿勢を維持し続けるための土台です。腕で荷物を持つ平地作業と違い、登山では背面から10〜20 kg前後の荷重が数時間かかり続けます。体幹が弱いと腰が反りすぎたり、重心が後ろに倒れたりして、疲労の蓄積と転倒リスクが高まります。

週2回という頻度の根拠と設計の考え方

筋力は、トレーニング後の回復・適応のプロセスで高まります。同じ筋群を毎日追い込むと回復が追いつかず、かえって疲労が蓄積します。一方で週1回では刺激の頻度が少なく、特に初心者期には適応が遅れます。週2回は、48〜72時間の回復時間を挟みながら同じ筋群に繰り返し刺激を与えられる、バランスの取れた頻度です。

週2回の設定例として、「月・木」や「火・土」のように中2〜3日空けるパターンが扱いやすいです。山行がある週末は、金曜や土曜に筋トレを入れると当日・翌日の疲労が残るため、山行の3〜4日前までに2回目を終えるよう調整してください。

強度の目安は「10〜15回で限界、または限界の少し手前」に設定します。軽すぎると筋力向上の刺激になりにくく、重すぎると関節への負担や怪我のリスクが高まります。自体重(自分の体重だけを負荷にする)の種目から始め、余裕が出たらダンベルや加重ベストで段階的に負荷を上げるのが安全な進め方です。

週2回のメニュー構成

以下は自体重で実施できる基本構成です。1回のセッションで30〜45分を目安にしてください。

A日(主に下肢前面・体幹前面)

  1. スクワット 足を肩幅に開き、膝がつま先より前に出すぎないよう注意しながらゆっくり下ろす。下ろす際に3〜4秒かける「スロースクワット」にすると伸張性収縮の練習になります。3セット × 12〜15回。
  2. ランジ(前後交互) 片脚を大きく前に踏み出して膝を曲げ、後ろ足の膝を床に近づける。不安定な地面を歩く登山の動作に近い片脚系の種目です。左右各3セット × 10回。
  3. カーフレイズ 段差の端をつかまり立ちで行うと可動域が広がります。3セット × 20回。ゆっくり下ろすことを意識する。
  4. プランク 肘をついたフロントプランクで体幹を固定。腰が下がったり上がったりしないよう鏡や動画で確認。30〜60秒 × 3セット。

B日(主に下肢後面・体幹後面)

  1. ルーマニアンデッドリフト(自体重または軽いダンベル) 膝をわずかに曲げた状態で股関節から前傾し、ハムストリングスと大臀筋を伸ばす。背中が丸まらないよう注意。3セット × 12回。
  2. グルートブリッジ 仰向けで膝を立て、お尻を持ち上げて大臀筋を絞る。頂点で2秒止める。3セット × 15回。片脚バージョンにすると負荷が増します。
  3. ステップアップ 15〜20 cmの台(段差や頑丈な踏み台)に片脚で乗り、反対の脚を空中に持ち上げてから下ろす。登山の「一歩の蹴り上げ」に最も近い動作です。左右各3セット × 10回。
  4. バードドッグ 四つん這いから対角の手と脚を伸ばし、体幹の安定性を鍛えます。左右各3セット × 10回。

段階的な負荷の上げ方と陥りやすい失敗

筋トレの効果が出始めるのは、一般的に4〜8週間継続した後とされています。2〜3週間で「楽になってきた」と感じたら、次の方法で負荷を段階的に上げてください。

陥りやすい失敗のひとつは、「きつくないからもっとやる」という過剰なセット追加です。筋トレは量より回復との兼ね合いが重要で、週2回・各種目3セットを丁寧にこなす方が、毎日大量にやるよりも効果が出やすいです。

もうひとつは「上半身を省略する」ことです。登山ではストックを使う場合に上半身も使いますが、それ以上に、重いザックを背負ったときの姿勢維持に広背筋・僧帽筋が関わります。余裕があれば、プランクの派生として「レネゲードロウ」(プランク姿勢でダンベルを引く)やTバンドを使った肩甲骨周りのエクササイズをB日に加えると、荷重時の上体安定に役立ちます。

山行との組み合わせ方

筋トレだけでは「登山に使える筋力」にはなりにくいです。筋トレで筋力の土台を作り、それを登山に近い動作で使うことで初めて山での動作に転移します。目安として、筋トレを8週間継続したら、「荷物を背負った長時間歩行」か「実際の低山ハイク」を挟んで身体の変化を確認してください。

筋トレと有酸素系トレーニング(ウォーキング、階段昇降)を同じ日にやる場合は、筋トレを先に行うほうが一般的です。有酸素系を先に行うと、筋トレに使うエネルギーが先に消費されてしまい、強度を保ちにくくなります。ただし、ウォームアップとして軽い有酸素(10分程度のウォーキング)を入れることは怪我予防の観点から有効です。

次の行動

まず今週中に、A日のメニュー(スクワット・ランジ・カーフレイズ・プランク)を一度通してやってみてください。翌日の筋肉痛の出る場所と強さを確認することで、自分の弱点筋群がわかります。スケジュールを手帳やスマートフォンに入れ、「山行の何日前に最後の筋トレを入れるか」まで決めてしまうと継続しやすいです。YAMATOMOの登山記録機能を使って山行後の脚の疲労感を記録しておくと、筋トレの効果を客観的に振り返る材料になります。

参考資料

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