著者 YAMATOMO 編集部 公開日 約10分で読めます

岩場の有名ルート——石鎚・剣山の鎖

岩場の有名ルート——石鎚・剣山の鎖(イメージ)

四国の名峰・石鎚山と剣山は、同じ島にありながら山の性格がまったく異なります。石鎚山には「試し鎖」「一の鎖」「二の鎖」「三の鎖」と呼ばれる鎖場が連続し、垂直に近い岩壁を直登する区間があります。一方の剣山は、山頂部こそ穏やかな木道ですが、ジロウギュウや次郎笈(じろうぎゅう)への稜線や、剣山本峰の北東に延びる一部ルートでは岩稜歩きが求められます。「石鎚・剣山の鎖」と検索する方の多くは、この二山の鎖場が自分のレベルに合っているかどうか、どう準備して臨めばよいかを知りたいのではないでしょうか。

この記事では、二山の鎖場が持つ地形的な特徴と難度の違い、判断の基準、そして準備の手順を整理します。体験談や所要時間の断定は避け、判断に使える「考え方の軸」を中心に構成しました。個別の最新情報(開山期間・規制・施設状況)は、各自治体や山小屋の公式情報で必ず確認してください。

石鎚山の鎖——「試し」から三の鎖まで何が違うか

石鎚山の鎖場は、試し鎖・一の鎖・二の鎖・三の鎖の順に山頂へ向かって配置されています。それぞれ長さと傾斜が異なり、後半になるほど垂直に近くなります。

試し鎖は、名前のとおり鎖場に慣れるための区間です。長さは比較的短く、下降ルートも別に設けられているため、「ここで無理と判断して迂回路へ戻る」という判断ができます。試し鎖を終えた段階で、手のひらの疲労・足首への負担・高度への反応を自分で確かめておくことが重要です。

一の鎖・二の鎖・三の鎖と進むにつれ、岩面の傾斜は急になり、鎖を頼る時間も長くなります。三の鎖は二の鎖よりさらに長く、途中で足場を探しながら体重を鎖と岩の両方で支える局面が続きます。雨や朝露のあとは岩が滑りやすくなるため、乾いた晴天日との難度差が大きくなります。

石鎚山の鎖場全体に共通する地形的な特徴として、「鎖が斜め方向に走っている区間」があります。真上に引っ張り上げるのではなく、体を横に振りながら次の足場を探す動作が必要になるため、腕力だけに頼ると消耗が速まります。骨盤の高さを意識して脚で押し上げる動作を基本にすることが、長い鎖場を安定して通過するための考え方です。

なお、各鎖場には迂回路が設けられています。「鎖を登らなければ山頂へ行けない」ということはありません。自信がない場合、あるいは下山時に疲労が出ている場合は、迂回路を選ぶことが合理的な判断です。

剣山の岩場——稜線と北東ルートの性格

剣山は山頂付近の木道と穏やかなキャンプ地のイメージが先行しますが、山域全体で見ると岩稜区間が存在します。

代表的なのは、剣山本峰から次郎笈(標高は西剣山系の中でも高い部類)へ向かう稜線です。稜線上には細くなる箇所があり、風が強い日は体が流されないよう重心を下げて歩く必要があります。石鎚山のような垂直の鎖場ではありませんが、滑落リスクのある斜面に隣接した細尾根を歩くという意味では、岩場経験として重要な練習になります。

石鎚山との最大の違いは、「鎖がない岩場」という点です。手がかりの少ない斜面では、鎖があるときの安心感がなく、ルートファインディング(正しいルートを見つける判断)の精度が問われます。踏み跡が複数に分かれる場所では、地図・コンパス・GPSアプリを合わせて現在地を確認する習慣が重要です。

また、剣山周辺は霧が出やすく、視界が急激に低下することがあります。ガスの中で細尾根を歩くと、感覚上の傾斜と実際の傾斜が一致しなくなるため、晴天時よりも動作を小さく慎重にする必要があります。気象情報は気象庁の山岳天気予報や地元の登山者情報を活用し、雨や強風が予報されている日は稜線への進入を再考してください。

二山の鎖・岩場を比べる判断軸

どちらの山から入るか、あるいは両方を計画するかを判断するための軸を整理します。

鎖場の技術を身につけたいなら石鎚山

石鎚山の鎖場は、「岩場の技術を段階的に習得する」という目的に向いています。試し鎖から三の鎖まで、難度が上がる順番に鎖が配置されており、途中で迂回する選択肢もあるため、自分の限界を安全にテストできます。

鎖場を通過するうえで確認しておきたい技術要素は次の三点です。

  1. 三点支持:両手・両足のうち常に三点を岩や鎖に置き、一点ずつ動かす。
  2. 重心の位置:鎖に全体重を預けず、できる限り足の置き場を探して脚で体を支える。
  3. 下降の判断:登りより下りの方が難しい。下降時に鎖に背を向けず、岩面と向き合う姿勢で降りる。

稜線歩きと自己判断力を試したいなら剣山

剣山の岩稜は、「道標や鎖がない環境で判断する力」を問います。次郎笈への縦走路は、天候が安定しているときに見れば明瞭なルートです。しかし霧・強風・降雪後の条件では、ルートを外れやすくなります。地形図を読む習慣がある方、GPSアプリと地図を組み合わせて歩ける方に向いています。

両山を組み合わせる場合の考え方

石鎚山で鎖場技術を確認してから剣山の稜線に進む、という順番は理にかなっています。ただし、二山は距離的に離れており、同一行程で結ぶことは一般的ではありません。それぞれを独立した山行として計画し、天候・体力・装備をそれぞれに合わせて準備することを勧めます。

装備と準備——鎖場・岩稜歩きに必要なもの

鎖場と岩稜に共通して必要な装備と、特に注意が必要な点を挙げます。

グローブ(手袋)は必須です。鎖は金属製で、長時間握ると手のひらが擦れます。薄手のフィンガーレスグローブより、指先まで覆う薄手の岩場用グローブが鎖場では扱いやすいです。ただし厚すぎると指先の感覚が鈍るため、岩の凹凸を感じられる素材を選んでください。

ソールの状態を出発前に確認してください。登山靴のビブラムソールは使用するにつれて減り、濡れた岩でのグリップが落ちます。鎖場や岩稜は乾燥した岩でも神経を使う場所なので、ソールが薄くなっていると感じたら、山行前に靴のメンテナンスを検討してください。

ヘルメットは、石鎚山の鎖場では多くの登山者がすれ違う場面があります。上部から落石が来る可能性があるため、ヘルメットを着用する習慣を持っておくことは保守的な判断です。剣山の稜線でも、強風時に体のバランスを崩すリスクを考えると、頭部の保護は軽視できません。

行動食と水分は、鎖場区間では補給できないと想定して準備します。鎖場に入る直前に水分と補給食を済ませ、両手を空けた状態で岩場に臨む習慣が安全につながります。

撤退と迂回——判断のタイミング

鎖場・岩稜で最も大切なのは、「進む判断」よりも「引き返す判断」を早めに下すことです。

石鎚山では、試し鎖で「腕への負荷が予想以上に大きい」「高度感で体が硬直する」と感じた場合は、そこで迂回路を選ぶ判断を勧めます。二の鎖・三の鎖まで進んだ後に引き返す方が、体力的にも精神的にも負荷が大きくなります。

剣山の稜線では、「霧でルートの先が見えない」「風で体がよろける」という状況になったとき、稜線を引き返して樹林帯に入る判断が安全です。尾根の細い部分での視界不良は、疲労と重なると方向感覚の喪失につながることがあります。

撤退・迂回は失敗ではありません。その日の条件と自分の状態を正確に読んで判断できることが、岩場・稜線歩きの技術の一部です。

次の行動

石鎚山へ向かう前に、愛媛県や石鎚山の管理組合の公式情報で開山期間・ロープウェイの運行状況・登山道の整備情報を確認してください。剣山については、徳島県や剣山観光登山リフトの運行状況・山小屋の営業期間を確認することを勧めます。気象は出発前日だけでなく、当日朝に気象庁の山岳天気予報で再確認する習慣を持ってください。同じルートを経験した登山者の記録を参照したい場合は、YAMATOMOの登山記録共有機能や「ベースキャンプ」で四国の登山仲間とつながることも一つの手段です。

参考資料

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