著者 YAMATOMO 編集部 公開日 約8分で読めます

尾根を地図で見分ける——似た形の尾根を地名以外で区別する

斜面の展望地点から対岸の尾根と谷を見渡す登山者

隣り合う二本の尾根が、どちらも南へ延びている。こんなとき、地名を覚えていることと、今見ている形を地図の尾根へ対応させられることは別です。一つの似た形に決めつけず、ほかの候補も残して比較する準備をします。ここでは出発前の地図の読み比べを扱い、現地での位置確認を保証する判定表は作りません。

尾根の名前を外して、候補を同じ形式で書く

国土地理院の『地図を見て尾根と谷を読み解く』は、等高線が低い方へ張り出す尾根と、それとは反対向きになる谷を図で対比しています。まず、比較している筋が尾根なのか谷なのかを確かめます。線の形が似ているという印象だけで、別の種類の地形を並べないためです。

その教材には、赤線で例示した尾根以外にも尾根があるとの注意もあります。教材の色付きの線だけを探す練習で終えず、線を引く前の等高線から、周囲とのつながりを読み取ることが必要です。ただし、読み取った尾根が歩ける道であるとは限りません。

編集部では、比較したい二つの候補を、作業用にAとBと呼ぶ方法を提案します。AとBは地図へ恒久的に付ける地名ではなく、候補を取り違えないための仮名です。山域、使った地図、比較範囲、閲覧日も一緒に残します。

候補ごとのメモは、『どこからどの方角へ延びるか』『途中でどこが変わるか』『近くの地形との位置関係』の三つにそろえます。片方だけ山頂付近、もう片方はずっと下の枝尾根を見るのでは比較が難しくなるので、どの部分を対象にしたかも書き添えます。

一つの特徴から、組み合わせへ増やす

日本オリエンテーリング協会のポケットガイド『現在地を把握する様々な方法』は、同じような特徴物がほかにもないかを地図で確認するよう説明しています。地形では、方向や傾斜の違い、目立つピークや鞍部、尾根・谷の分岐、特徴的な方向変化などが手掛かりとして挙げられています。

同ガイドは、道の分岐だけで判断すると別の分岐と取り違える可能性があり、道の方向や鞍部という地形も組み合わせて確実性を高める考え方を示しています。『分岐がある』から一歩進めて、『どちらへ分かれ、周囲はどんな地形か』まで合わせるという読み方です。

また、同協会の『オリエンテーリング指導教本 ナビゲーション技術編』第3版は、上級者への指導の章で、同型の地形を形、大きさ、方向、位置関係などから同定する技術を挙げています。これは競技者の技術を扱う説明です。本稿では比較の視点を参考にし、初心者が本文だけでその技術を習得できるとはしません。

実際の予習では、最初に『南へ延びる』と書いたら、次に方向変化や近くの鞍部など、別の項目で差を探します。似ている部分を何度も言い換えるのではなく、同じ方角でも周囲との関係が違うかを確認するのが、この比較メモの目的です。

仮の二候補で、一致と不一致を残す

説明用の架空の例を考えます。候補Aは南へ延びた先で東へ曲がり、その曲がり角より手前に鞍部があるとします。候補Bも南へ延びていますが、比べる範囲では大きな方向変化がなく、鞍部も読み取れていないとします。実在の登山道や現在地を示す例ではありません。

この二つは、『南へ延びる』という項目では似ています。一方で、Aには『東へ変わる場所と、その手前の鞍部』という組み合わせがあります。メモでは、鞍部があるかだけでなく、曲がる場所より前か後かも書きます。互いの位置関係を言葉にすると、単独の形の比較より、何を見比べているかが明確になります。

仮に『南へ進んだあと東へ向きを変え、その前に鞍部を通った』という記録を比較するなら、Aの説明と合う項目があります。それでも、この一致だけでAにいると断定はしません。比べた範囲の外に似た候補がないか、地図や記録の読み違いがないかという確認は残ります。

Bについても、『鞍部を読み取れていない』を『鞍部が絶対に存在しない』へ変えません。小さな起伏を地図上で判断できない場合と、はっきり異なる地形を確認した場合を別に残します。不明な項目を、候補を消すための都合のよい不一致にしないためです。

照合欄には、編集部の提案として『合う』『合わない』『判断できない』の三つを使います。三項目が合うから、残る一項目の矛盾を無視してよい、という多数決にはしません。矛盾した理由を整理し、比較範囲や前提を見直すための欄です。

周囲と移動の記録を使い、空欄を推測で埋めない

ポケットガイドは、見えている特徴に当てはまる別の場所の可能性を具体的に考え、これまで見たものも総合して判断するよう勧めています。候補を一つ見つけたところで終えず、『ほかの候補なら、同じ並びになるか』という問いを残す根拠になります。

予習メモでは、尾根の曲がりや鞍部に加え、近くの谷がどちら側にあるか、前に確認した地点からどうつながるかも記します。左右という言葉だけでは、見る向きが変わったときに混同しやすいため、どちらを向いて書いたか、必要なら地図上の方角も添える、という整理を提案します。

一方、地図は現地のすべての細部をそのまま描くものではありません。国土地理院の2万5千分1地形図図式の第6条は、表示を考慮して事項を適切に取捨選択するとしています。この規定だけで、省略された起伏の大きさや、個々の記号の実際のずれを数値で決めることはできません。

そこで、比較の結果は『Aと複数の点で一致する』『Bはこの項目が不明』『別の候補も要確認』のように、判断の根拠と残りを一緒に書きます。等高線の本数を周辺一帯で数え、その数だけで個々の尾根に急さの順位を付けたり、地図記号を一定距離だけ動かして照合したりする手順にはしません。

現地で確認するために、予定の道から別の尾根へ移って試すことも、この予習には含めません。対象ルートの通行情報や、地図・コンパスなどを扱う技能の確認は別に必要です。メモで分からない部分を可視化し、出発前の追加確認や講習で具体的に質問できる形にしておきます。

まとめ——似ている理由より、違いを確かめる

似た尾根を地名以外で区別する準備では、伸びる向きだけでなく、方向が変わる位置、鞍部や谷との関係、前後のつながりを同じ形式で比べます。複数の特徴が合うかと、ほかにも当てはまる場所がないかを、両方確認します。

AとBという仮名や三つの照合欄は、その確認を整理するための提案です。読めない地形を存在しないものとして消したり、項目数の多数決で現在地を決めたりせず、根拠と不明点が残るメモにしましょう。

参考資料・出典

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