著者 YAMATOMO 編集部 公開日 約9分で読めます

縦走の交通——入口と出口が違う時の移動

縦走の交通——入口と出口が違う時の移動(イメージ)

縦走は、登った山を同じルートで下りる「ピストン」と違い、稜線を歩き通して別の登山口へ下りてきます。そのため、スタートとゴールが異なる「片道移動」を自分で組み立てなければなりません。公共交通が充実している山域ならバスと電車を乗り継ぐだけですが、本数の少ない山深い場所では、移動計画の失敗が山行全体を崩す原因になります。

「下山口からどうやって帰るか」を後回しにしたまま山行計画を立てると、下山後に終バスが終わっていた、タクシーが捕まらなかった、といった状況が起きます。縦走の交通計画は、登山計画と同じ段階で、同じ真剣さで検討する必要があります。

この記事では、入口と出口が別になる縦走で、移動をどう組み立てるかの判断基準と手順を示します。

「片道移動」の構造を先に把握する

縦走の移動計画が難しいのは、自分の車を一か所に置いておけないからです。ピストンであれば登山口の駐車場に車を置いて戻ってくればよいですが、縦走では出発地点に車を停めると、下山後にそこまで取りに戻る手段が必要になります。

移動の構造は大きく三つに分かれます。

  1. 公共交通だけで完結させる——出発地まで電車・バスで行き、下山口からも電車・バスで帰る。マイカーを使わない最もシンプルな方法。
  2. 下山口に車を置いてスタート地点へ向かう——下山口の駐車場に車を停め、バスやタクシーでスタート地点まで移動して登り始める。下山後はすぐ自分の車で帰れる。
  3. 複数人で車を二台使う——一台をゴールに、もう一台をスタートに置く。下山後にゴール側の車でスタート側の車を回収しに行く。

どの方法が現実的かは、山域の公共交通の状況と同行者の数によります。まず「その山域にバスや電車があるか」を確認することが出発点です。

公共交通の調べ方と注意点

山岳地帯のバスは本数が少なく、季節運行(開山期間のみ運行)のものも多くあります。平地の感覚で「調べれば何とかなる」と思っていると、下山口にバスがまったくない、あるいは最終便が昼過ぎに終わる、という状況に直面します。

調べる手順としては、まず山域を管轄する自治体や観光協会のウェブサイトを確認します。登山者向けの交通案内ページを設けている自治体も多く、季節ごとのバス路線図が掲載されていることがあります。次に、バス会社の公式サイトで時刻表と最終便の時刻を確認します。路線バスのほか、登山シーズンに合わせて運行される「登山バス」「マイカー規制シャトルバス」も存在します。これらは年によって運行期間や本数が変わることがあるため、前年の情報をそのまま使い回さず、当年の情報を出発前に必ず確認してください。

鉄道は比較的安定していますが、山間部のローカル線は減便や廃線が進んでいる地域もあります。乗換案内アプリで検索するだけでなく、実際の路線の最終電車時刻も確認しておくと安心です。

バスや電車が使えない、あるいは本数が少なすぎて行程に合わない場合は、タクシーを検討します。山岳地帯の登山口近くには対応するタクシー会社が限られることが多いため、事前に電話で確認し、必要であれば予約しておくと確実です。下山後に電波が通じない場所でタクシーを呼ぼうとしても、そもそも繋がらない場合があります。

車を使う場合の二つのパターン

下山口に車を置いてスタートへ向かう方法

この方法の利点は、下山後すぐに自分の車で帰れる点です。疲労した状態での乗り換えや待ち時間が最小限になります。手順は次のようになります。

  1. 下山口(ゴール)の駐車場に車を停める
  2. バス・タクシー・同行者の車などでスタートの登山口まで移動する
  3. 縦走して下山口へ下りてきたら、自分の車で帰る

この方法は、スタート側の登山口までの交通手段が確保できるかどうかにかかっています。バスがある場合はよいですが、ない場合はタクシーを使うか、同行者に送ってもらう必要があります。また、下山口の駐車場が有料の場合、山行日数分の駐車料金がかかります。駐車場の有無・台数・利用条件は、自治体や管理者の公式情報で事前に確認してください。

二台の車で回す方法

複数人で行動する場合、それぞれが車を持っているなら一台をスタートに、もう一台をゴールに置く方法が使えます。縦走を終えてゴールに着いたら、ゴール側の車でスタートに戻り、残った車を回収します。

この方法は交通費がかさまず、時刻表に縛られない自由度があります。ただし、スタートとゴールの距離が遠い山域では、車を回収するための移動そのものが数時間になることもあります。回収の移動時間を山行後の体力で担える人をあらかじめ決めておくと混乱が少なくなります。

行程の「余白」と最終便の扱い方

縦走計画で最も危険な思い込みは、「予定通りに下山できれば最終バスに乗れる」という前提で計画を立てることです。縦走は日程が複数日になることが多く、天候・体調・道迷いによって計画がずれやすい性質を持っています。最終バスにぎりぎり間に合う時刻に下山を設定してしまうと、少しの遅れで帰れなくなります。

判断の目安として、最終バス・最終電車の1〜2時間前には下山口に着くように行程を組むことを検討してください。それが難しい場合は、最終便を使う前提の計画自体を見直し、前泊や行程の短縮を検討します。

また、山中でのコースタイムは個人差が大きく、縦走では荷物の重さも通常の日帰りより増します。初めて歩く山域では、コースタイムに余裕を持たせることが基本です。

下山が遅くなった場合の「プランB」も事前に考えておきます。近くに山小屋があれば予約なしで緊急宿泊を受け入れてもらえることもありますが、繁忙期や小規模な山小屋では断られる可能性もあります。事前に宿泊の可否を確認しておくか、テント泊装備を持つか、行程に余裕を作るか——いずれかで対応してください。

マイカー規制がある山域への対応

人気の山域では、シーズン中にマイカー規制が設けられ、登山口まで自家用車で入れないことがあります。この場合、規制区間の手前にある駐車場にマイカーを停め、シャトルバスに乗り換えることになります。

縦走でマイカー規制区域をまたぐ場合、スタートとゴールで規制の区間や乗降ポイントが異なることがあります。片方の登山口はシャトルバスで入れても、もう一方の下山口はシャトルバスの路線外、というケースもあります。規制の範囲・対象期間・シャトルバスの乗降場所は、対象山域を管轄する自治体や管理機関の公式情報で確認してください。

次の行動

まず計画している縦走のスタート地点とゴール地点を地図上で確認し、それぞれに公共交通があるかどうかを自治体・バス会社の公式サイトで調べてください。バスの最終便の時刻を確認したうえで、下山予定時刻との間に十分な余裕があるかを検討します。交通手段の目処が立ったら、YAMATOMOの「ベースキャンプ」や目的別コミュニティで同じ山域を計画している人と情報交換してみると、現地の実情に近い情報が得られることがあります。

参考資料

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