著者 YAMATOMO 編集部 公開日 約9分で読めます

登山ウェアの洗濯と保管——機能を落とさない方法

登山ウェアの洗濯と保管——機能を落とさない方法(イメージ)

登山ウェアを洗濯したあとに「撥水が効かなくなった」「フリースがごわついた」と感じたことはないでしょうか。登山用のウェアには、防水透湿素材・撥水加工・吸汗速乾素材・ダウンなど、日常着にはない機能が備わっています。これらは正しい洗い方と保管をすれば長く維持できますが、家庭洗濯の「いつもの手順」をそのまま当てはめると機能が急速に落ちることがあります。

この記事では、素材ごとに異なる洗濯の考え方と、シーズンオフの保管方法を整理します。「洗わないほうが安全では」と思いがちですが、汗や皮脂、日焼け止めの成分は撥水加工を劣化させる原因になります。適切に洗う方が、結果として機能を保てます。

洗う前に確認する三つのこと

洗濯表示と素材タグを読む

ウェアの内側に付いているケアラベルは、メーカーが保証する最低限の処理方法を示しています。「手洗い」「30℃以下」「乾燥機不可」などの表示があれば、それが判断の基準になります。タグをはがしてしまった場合は、メーカーの公式サイトや製品ページで確認できることが多いです。

専用洗剤か中性洗剤を選ぶ

一般の蛍光増白剤入り洗剤や柔軟剤は、登山ウェアには向きません。蛍光増白剤は撥水加工の皮膜に干渉することがあり、柔軟剤はダウンや化繊の繊維間にコーティングが残って保温性・吸汗性を低下させます。アウトドア用の専用洗剤(「テクニカルウォッシュ」などの名称でアウトドアブランドから販売されています)か、無蛍光・無柔軟の中性洗剤を選ぶのが基本です。

一緒に洗うものを選ぶ

ファスナーや面ファスナー(マジックテープ)はフリースや薄手の化繊生地に引っかかります。洗濯前にファスナーをすべて閉じ、面ファスナーを留めておく習慣をつけてください。素材が異なるウェアを同じ洗濯ネットに入れるのも避けたほうが無難です。

素材別の洗い方

防水透湿素材(ゴアテックスなど積層メンブレン系)

防水透湿素材のレインウェアは、汗や皮脂が蓄積すると透湿性(内側の湿気を外に逃がす性質)が落ちます。「蒸れるようになった」と感じたら、汚れが原因のことがほとんどです。こまめに洗うのが機能維持の近道です。

洗濯機使用可のものは、専用洗剤または中性洗剤を使い、弱水流(おしゃれ着コースなど)で洗います。すすぎは十分に行い、洗剤が残らないようにします。脱水は短時間にとどめ、縦型の場合は脱水を1分以内で切り上げるとよいでしょう。

乾燥は自然乾燥が基本ですが、メーカーが乾燥機を認めている製品では低温設定での乾燥機使用が撥水性の回復に有効です。熱によってウェア表面の撥水剤が再活性化するためです。乾燥機が使えない場合は、乾いてからアイロンのスチームを当てる(当て布を必ず使い、低温設定で)か、撥水剤スプレーを再塗布する方法もあります。

撥水剤スプレーの再塗布は、洗濯後に清潔な状態で行います。汚れの上に塗っても効果は出ません。

化繊インサレーション(フリース・化繊中綿)

フリースは洗濯機の弱水流で洗えますが、柔軟剤は禁忌です。柔軟剤の成分が繊維をコーティングして吸汗・速乾・保温の効果を落とします。また、毛玉防止の観点から単独か同種素材のものと一緒に洗うのが理想です。

化繊中綿ジャケット(ポリエステルわたやプリマロフトなど)は洗濯機可のものが多いですが、中綿の偏りを防ぐためにテニスボールを2〜3個入れて乾燥機にかける方法が一般的に知られています。乾燥機が使えない場合は、乾燥中に手で中綿をほぐしながら形を整え、完全に乾くまで干します。生乾きのまま保管すると臭いや機能低下の原因になります。

ダウン(羽毛製品)

ダウン製品は洗えないと思われがちですが、「ダウン用洗剤」または中性洗剤を使い、洗濯機の手洗いコースで洗うことができます(ケアラベルで確認してください)。ただし通常の洗剤では羽毛の油分が失われ、保温性が落ちます。

乾燥は最も注意が必要です。ダウンは濡れた状態では重く固まるため、そのまま干すと一部に偏りが生じます。乾燥機の低温設定で時間をかけて乾かすか、自然乾燥の場合は平干しにして数時間おきに手でほぐす作業を繰り返します。半日以上かけて完全に乾かすことが必要で、芯まで乾いていない状態でケースに入れると加水分解やカビの原因になります。

ベースレイヤー(メリノウールなど)

メリノウールは「ウール用洗剤」または中性洗剤を使い、30℃以下のぬるま湯か冷水で洗います。高温は繊維のスケール(うろこ状の表面構造)を傷め、縮みや硬化の原因になります。脱水は短時間にし、形を整えてから陰干しします。乾燥機は基本的に避けてください。

化繊ベースレイヤーは比較的扱いやすいですが、やはり柔軟剤は吸汗速乾を落とすため使わないのが原則です。

汚れの種類と前処理

泥汚れは乾かしてから叩いて落とし、その後洗濯するのが基本です。濡れた状態でこすると繊維に泥が入り込みます。日焼け止めや虫よけスプレーの成分は撥水加工を劣化させるため、使用後はできるだけ早く洗うことが理想です。特に首回りや袖口に残りやすいので、汚れがひどい部分は洗剤を薄めたものを直接塗って数分おいてから洗濯します。

血液や食べ物の汚れは、冷水で早めに対処します。温水はたんぱく質を固着させるため、熱めのお湯は使わないでください。

シーズンオフの保管

保管前の徹底乾燥

シーズン末に長期保管するときは、洗濯後に完全に乾かすことが最重要です。わずかな湿気が残っていると、半年後に加水分解・カビ・臭いの原因になります。保管前日に改めて陰干しして確認する習慣をつけると安心です。

ダウンは圧縮しない

ダウンのジャケットや寝袋を長期保管するとき、スタッフサック(付属の収納袋)に圧縮したまま保管するのは機能低下につながります。羽毛は圧縮された状態が続くとロフト(ふくらみ)が戻りにくくなります。大きめの袋や箱に入れるか、ハンガーにかけて保管するのが理想です。化繊中綿も同様の考え方が当てはまります。

防虫剤と素材の相性

防虫剤(樟脳やナフタリン)は化学成分がウレタンコーティング素材を劣化させることがあります。ゴアテックスなどのラミネート素材を防虫剤の近くで保管するのは避けてください。ウールには防虫剤の使用が一般的ですが、ケアラベルや製品の説明で確認してください。

収納場所の条件

高温多湿の場所(押し入れの奥、車のトランクなど)は素材の劣化を早めます。直射日光も紫外線による変色・劣化の原因になります。風通しのよい、温度変化の少ない場所で保管するのが基本です。

次の行動

今シーズン使ったウェアのケアラベルを今一度確認し、素材に合った洗剤を用意するところから始めてみてください。洗濯後の乾燥を十分に行ったうえで保管すれば、来シーズンも機能を維持したまま使い始めることができます。YAMATOMOの加盟店には登山用品ショップも含まれているため、専用洗剤や撥水剤スプレーの選び方をスタッフに相談することもできます。

参考資料

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