著者 YAMATOMO 編集部 公開日 約8分で読めます

登山の塩分補給——塩飴とタブレットの使い方

登山の塩分補給——塩飴とタブレットの使い方(イメージ)

登山中に足がつる、頭がぼんやりする、水を飲んでも渇きが収まらない——こうした症状の多くは、水分と同時に失われた塩分(ナトリウム)の不足が関係しています。汗には水だけでなく電解質が含まれており、水だけを補い続けると体液中のナトリウム濃度が薄まり、筋肉や神経の働きが乱れます。

塩飴や塩タブレットは、この塩分をすばやく口から補う手段として多くの登山者が携行しています。ただ「とりあえず舐めておく」では効果が半減し、摂りすぎると別のリスクも生じます。この記事では、塩飴とタブレットの違い、使うべきタイミング、量の考え方、よくある誤りを順に整理します。

なぜ登山で塩分が必要になるのか

人の汗には1リットルあたり約0.3〜0.9グラムのナトリウムが含まれるとされています(個人差・気温・運動強度によって幅があります)。夏山や長時間の行動では1日に数リットルの汗をかくこともあり、水だけで補い続けると体液が希釈された状態、いわゆる「低ナトリウム血症」に近づくリスクがあります。

軽度の低ナトリウム状態では、吐き気・頭痛・脱力・集中力の低下が現れます。これらは熱中症と症状が似ているため区別しにくいのですが、「水を飲んでも改善しない」「むしろ不快感が増す」場合は塩分不足を疑う手がかりになります。塩分を補うと症状が和らぐことが多いですが、判断に迷う場合や症状が強い場合は下山して医師に相談してください。

塩飴とタブレットの違いを整理する

どちらも塩分補給を目的としていますが、成分の構成と使い勝手が異なります。

塩飴(塩キャンディ)は、砂糖・水飴を主体にナトリウムと、製品によってはカリウム・クエン酸・ビタミンを加えたものです。ゆっくり溶けるため口の中で長く味を感じられ、エネルギー(糖質)も同時に摂れます。行動中に飴を口に入れておくだけでよいので操作が簡単です。一方、ナトリウム含有量は製品ごとに大きく異なり、1粒あたり数十〜100mg程度のものが多いです(製品ラベルで確認してください)。

塩タブレット(塩サプリ)は、ナトリウムの含有量が飴より高めに設定されているものが多く、カリウム・マグネシウムなど複数の電解質を配合した製品もあります。錠剤や粒状で水と一緒に飲むタイプが主流です。成分が明示されているため「何ミリグラム摂ったか」を把握しやすく、発汗量が多い夏山や長時間行動で意識的に管理したい場面に向いています。甘みが少ない分、食欲がないときでも摂りやすいという声があります。

どちらが優れているというわけではなく、「行動食としての塩飴を歩きながら舐め、激しく汗をかいた後のまとまった補給はタブレット」という組み合わせ方が実用的です。

使うべきタイミングと量の考え方

タイミングの基本

塩分補給は「症状が出てから慌てて摂る」より、「一定間隔で少量ずつ摂り続ける」ほうが体への負担が小さくなります。目安として、以下の場面を補給のきっかけにするとよいでしょう。

「喉が渇いてから水を飲む」のと同じように「症状が出てから補う」パターンは遅れが生じやすいため、積極的に摂ることを意識してください。

量の目安と注意点

一般的なガイドラインでは、登山中の塩分補給量は1時間あたり0.5〜1グラムのナトリウム程度を一つの参考値として挙げることがあります。ただし、これはあくまで目安であり、体質・気温・発汗量・食事内容によって大きく変わります。行動食や食事でも塩分は摂れるため、サプリメント単体で計算する必要はありません。

摂りすぎにも注意が必要です。過剰なナトリウム摂取は逆に口の渇きを強め、腎臓への負担が増します。製品に記載された推奨摂取量を上限の目安とし、それ以上は増やさないのが基本です。高血圧や腎臓・心臓に持病がある方は、登山での電解質補給の方針を事前に医師に相談してください。

製品を選ぶときの確認ポイント

登山用品店やドラッグストアには多くの製品があります。選ぶ際に確認しておくと判断しやすい項目を挙げます。

ナトリウム含有量(1粒あたり):製品ラベルの「栄養成分表示」にナトリウムまたは食塩相当量として記載されています。食塩相当量(グラム)×390でナトリウム量(mg)の概算が出ます。

他の電解質の有無:カリウム・マグネシウムを含む製品は、筋肉のけいれん予防を意識した設計のものが多いです。長時間・高負荷の山行では複合電解質タイプを選ぶ選択肢があります。

携行しやすさ:ジッパー付きの小袋タイプや、チャック付きピルケースに詰め替えられる製品は行動中に取り出しやすく、濡れにも強くなります。グローブをしたまま1粒取り出せるかどうかも夏山では意外に重要です。

溶けやすさ・味:塩飴は高温になるザックの中で溶けて固まることがあります。夏の低山では小分け袋を保冷ポーチに入れるか、タブレット中心にするなど工夫が必要です。

水との組み合わせ方と現場での失敗パターン

塩分補給は必ず水と組み合わせて行います。塩だけを摂って水を飲まないと体液の浸透圧がかえって上がり、細胞から水分が引き出されます。「塩飴1粒→水を2〜3口」が基本セットです。

現場でよく見られる失敗パターンをいくつか挙げます。

次の行動

次回の山行に向けて、まず手持ちの塩飴やタブレットのラベルを開き、1粒あたりのナトリウム量を確認してください。そのうえで、予定する行動時間と発汗量のおおまかな見積もりをもとに、何粒を何時間おきに摂るかを計画してから出発するのが最初のステップです。持病がある方や、塩分管理に不安がある方は、登山シーズン前に医師に相談することをお勧めします。仲間と一緒に行動する場合は、YAMATOMOの登山記録や「ベースキャンプ」でベテランの補給方法を参考にするのも一つの方法です。

参考資料

YAMATOMOで山の仲間を見つけよう

ベースキャンプ、コミュニティ、ガイド依頼など、山を楽しむための機能が充実。