著者 YAMATOMO 編集部 公開日 約7分で読めます

岩場を避ける登山——巻き道と代替ルート

岩場を避ける登山——巻き道と代替ルート(イメージ)

「岩場が苦手だから、あの山は無理」と決めてしまう前に、巻き道や代替ルートという選択肢を検討する価値があります。多くの山では、技術的な核心部を回避しながら山頂や稜線に立てるルートが複数用意されており、それを知っているかどうかで行動範囲はかなり変わります。

ただし、巻き道を使うことは「安全策」であると同時に、状況によっては別のリスクを生む判断でもあります。この記事では、巻き道や代替ルートがどういう場面で有効で、どう選び、どう歩くべきかを整理します。

巻き道とは何か、なぜ存在するのか

巻き道とは、尾根の核心部・岩峰・鎖場などを直接越えずに、その側面(山腹)を迂回して先へ進む道筋です。日本の登山道では「○○峰 巻き道」「難路を避ける場合はこちら」のような案内板や地図記号で示されていることがあります。

巻き道が整備される理由は主に二つあります。一つは、岩場の直登ルートが天候や季節によって状態が変わりやすく、全登山者に安全に使わせるには限界があるためです。もう一つは、体力・技術レベルの異なる登山者が同じ山を楽しめるよう、選択肢を設けるという設計思想です。

巻き道は「楽な道」ではありません。斜面をトラバース(横断)するため、足場が不安定な土・ザレ(細かい砂礫)・濡れた岩盤の連続になることも多く、特定の局面では直登ルートより体力・注意力を要する場合があります。「難しいから巻く」という判断は正当ですが、巻き道も同じく準備と技術が必要だという前提を外さないことが重要です。

代替ルートを探す前に確認すること

別ルートの検討を始める前に、現在地と目的地の関係を地図で整理しておく必要があります。以下の三点を確認してください。

巻き道が公式に存在するか

登山地図(紙の地図・地図アプリなど)に破線や注記で記載されている巻き道は、一般的に整備・案内されているものです。一方、踏み跡程度の巻き道は地図に載らないこともあり、現地で「なんとなく踏まれている」ように見えても整備された道でない可能性があります。自治体・山岳会・山小屋が管理する公式の登山道かどうかを、事前に山域の自治体や山小屋の情報で確認するのが基本です。

巻き道が通行可能な状態か

崩落・廃道・通行止めによって、地図上に存在する巻き道が現在も歩けるとは限りません。特に秋から初冬にかけては、台風や長雨による崩落が多い時期です。登山前には、山域を管轄する自治体や山小屋の最新情報を確認してください。

合流地点と所要時間の差

巻き道は距離・標高差が増えることが多く、コースタイムの目安が変わります。どこで元のルートに合流するのかを地図上で把握し、日没や天候悪化の時刻と照らし合わせて判断してください。

巻き道を歩くときの技術的な注意点

巻き道固有の地形として多いのがトラバース区間です。進行方向に対して斜めに力がかかるため、直登とは異なる足の置き方が必要になります。

足の置き方:斜面に対してつま先を向け、靴底全体をフラットに置くフラットフッティングを意識してください。かかとが浮いた状態で体重をかけると、砂礫や濡れた葉の上で滑りやすくなります。

ストックの使い方:トラバースでは山側の手のストックを短め、谷側を長めに持つと安定します。両手が塞がる岩場では一時的に収納する判断も必要です。

転落方向の意識:直登中の滑落は主に後方ですが、トラバース中は谷側への横滑りが主なリスクになります。常に谷側の足への荷重を意識し、重心を山側にわずかに傾ける姿勢を保ちます。

引き返しの基準を先に決める:巻き道に入った後で状況が悪化したとき、どこまで進んで、どの条件になれば引き返すかを、入口で決めておきます。「少し行けば良くなるかも」という心理は、巻き道でも遭難の入口になります。

代替ルート全体を変える判断

岩場の一区間を巻くのではなく、山への接近ルートそのものを別のものに変える選択もあります。同じ山頂を目指すルートが複数ある山では、岩稜帯の少ない尾根ルートや、樹林帯を主体とする長いアプローチルートが選択肢になることがあります。

この判断が有効なのは、以下のような場面です。

代替ルートを取るほど難しい山であれば、そのルート選定自体にも知識が必要です。登山計画の段階でルートを複数検討し、天候・体調によって切り替えられるよう準備しておくことが、経験を積んだ登山者の習慣です。

「今日は行かない」も一つの判断基準

岩場を避けるための巻き道を探す行動と、その日の入山自体を見直す行動は、同じ「リスクの評価」から生まれます。巻き道の存在を調べることは大切ですが、「巻けるなら行ける」と無条件につなげないことも同様に重要です。

雨が続いた直後・気温が低下して岩が凍り始める時期・視界が悪い稜線では、巻き道もまた別の危険を帯びます。条件が整わない日に山を変えるか延期するかは、技術の補完ではなく判断力そのものです。登山計画を柔軟に変更できるよう、同程度の難易度で岩場の少ない山を「代案の山」として持っておくと、山行の選択肢が増えます。

次の行動

まず手持ちの登山地図やアプリで、次に予定している山のルートに巻き道や代替ルートが記載されているかを確認してください。その上で、山域の自治体や山小屋の公式サイト・問い合わせ窓口で、現在の通行状況を確認する習慣をつけましょう。YAMATOMOの「ベースキャンプ」では、同じ山域を歩いた経験を持つ登山仲間と情報交換することもできます。計画段階でルートの選択肢を複数持つことが、岩場を苦手とする場合の最初の準備です。

YAMATOMOで山の仲間を見つけよう

ベースキャンプ、コミュニティ、ガイド依頼など、山を楽しむための機能が充実。